約3000通の郵便物を捨てた10代新入社員、背景に「昼休みを取れず残業が横行…」元職員が明かす“ブラック職場”疑惑 日本郵政は「労働力の確保に苦労している」

AI要約

日本郵便の西成郵便局で起きた10代の男性社員による郵便物廃棄事件について。男性社員は約3000通の郵便物を1カ月間にわたり捨てており、受取人に影響を及ぼす可能性がある。

現代の社会においても依然として使われる郵便物の重要性。情報流出の危険性や契約面での支障などの影響が懸念されている。

民営化後の日本郵便の職場環境の問題。人手不足が指摘され、ブラックな職場環境が定着した結果、職員のストレスや配達量の増加が問題化している。

約3000通の郵便物を捨てた10代新入社員、背景に「昼休みを取れず残業が横行…」元職員が明かす“ブラック職場”疑惑 日本郵政は「労働力の確保に苦労している」

 日本郵便は8月28日、大阪市の西成郵便局に勤務する10代の男性社員が約3000通の郵便物を廃棄していたと発表した。配達員が手紙や郵便物を配らずに、一軒家とマンションの間などに大量に捨てていたという耳を疑うような“事件”。会見した同社の小池信也近畿支社長は「信用第一の弊社がこのような事案を発生させたことをお詫び申し上げます」と謝罪した。

「日本郵便の発表によると、今年4月に入社したばかりの10代の男性社員は6月中旬から約1カ月にわたり、普通郵便とゆうメール計2827通の配達を行わず、7カ所に廃棄していた。男性社員は1日あたり300~500件の配達を担当していましたが、『郵便物を配達しきれなかった』と話しています。

『郵便物の束が置かれている』、『郵便物が届かない』という苦情も相次いでいたと言います。捨てられていた郵便物は回収されていますが、一部については捨てられたことによる汚れなどで、受取人が分からなくなっているものもあるといいます」(大手紙社会部記者)

 メールやSNSなどが発達した現代の日本社会でも、郵便物には多くの用途がある。郵便物が届かないことで、企業は契約面などで支障をきたし、孫からの手紙を受け取れなかった高齢者もいたかもしれない。個人情報も多く含まれた郵便物が廃棄されると情報が流出してしまう危険もある。

 なぜこのようなことが起きてしまったのか。民営化前の日本郵政の職員だった羽田圭二世田谷区議が解説する。

「(郵便物を廃棄することは)あってはならないことです。1日あたり300~500件というのは、地区にもよりますが他の郵便局と比べて突出した量ではないと思います。10代の新入社員ということですが、配達しきれないことを相談できる人がいなかったのでしょうか。相談しても解決策が見いだせずに、追い込まれてこのようなことをしてしまったのかもしれません」(以下同)

 民営化以降、郵便局の現場では人手不足が顕著となり“ブラックな職場”が定着しがちだという。

「昔は、配達先で『お茶を飲んでいきなよ』と言われてゆっくりするような時代でした。しかし現在は、どこも人出が足りず、そのような余裕はありません。配達が終わらないから『昼休みを取れない』『残業(超過勤務)が多い』ということは現場の声としてよく聞きます」

 時間指定配達などサービスが便利になった反面、そのあおりが現場を苦しめているという。

「民営化で効率を求めた結果ともいえます。最近では配達員の方が専用の端末を持っていますよね。あれもなかなか扱うのが大変なようです。さらに待遇面も良いとはいえず、なり手も少ないし定着もしない。組合もがんばっているようですが、働いている人の雇用形態も正社員や有期の契約社員などさまざまで、なかなか一筋縄にはいかないようです。

 このようなことから、西成の郵便局では、郵便物を廃棄した職員はもちろん、その上司など周りの職員にもゆとりがなかったのではないでしょうか」

 そして、再発防止のためにこう訴える。

「まずは職員全体に『信書の秘密』『あまねく公平なサービス』を保障する責務があるということを徹底してもらいたい。一方で、経営側にも課題はあります。仕事に使うものが自己負担、休暇が取れない、勤務時間が守れない、配達が終わるまで局に戻れないなどといった労働環境の改善と、社員全体の賃金の底上げが必要です」