フィアット、新型EV「600e」発表会 ハイブリッド/マイルドハイブリッドの来春導入も予告

AI要約

フィアットは新型EV「600e」を発売。500eの姉妹車と位置付けられ、54.06kWhのバッテリーを搭載し493kmの航続距離を実現。安全装備や機能も充実しており、デザインは初代600をオマージュしつつ現代性を持たせている。

600eはフィアットの新たなステップとして位置づけられ、将来はハイブリッドモデルも導入予定。デザインには初代600へのオマージュが施され、プロポーションやディテールにこだわりが感じられる。

フィアットは600eのターゲット層を若年層のデザイン志向なヤングファミリーと位置付け、発売記念イベントを開催。DOLCE VITAの生活を提案し、さらにファン層を広げる取り組みを展開している。

 フィアットは9月10日、新型EV(電気自動車)「600e(セイチェントイー)」を発売した。

 600eはフィアットとして2台目のEVとして導入され、「500e」の“お姉さん”となる位置付けて新たにフィアットファミリーに加わるモデル。54.06kWhのリチウムイオンバッテリを搭載し、WLTCモード一充電航続距離は493kmとしている。価格は585万円。

■ “カワイイ”を継承した600e。広い室内空間に充実の機能や装備

 同日に開催された発表会では、Stellantisジャパン 代表取締役社長 打越晋氏があいさつを実施。「立て続けに日本市場に新型車を導入する予定としておりますが、本日私が皆さまにご紹介したいのは、われわれがこれからたくさん新しいクルマを入れていきますよ、ということではないんです。私が皆さまにご紹介したいのは、今回発表した600eのようなバッテリEVを拡充していきます。それはもちろんのことですが、それに加えてプラグインハイブリッドやマイルドハイブリッド、そしてガソリンエンジンにいたるまで、すべてのパワートレーンを展開していきます。それによって、もともとわれわれStellantisジャパンが持っていた強み、7つのブランドで多様性のあるモデル、それをお客さまのライフスタイル、カーライフに即したかたちでパワートレーンをお選びいただける、言わば選択の喜び、それをより強化していく。これこそがわれわれステランティスの新しい時代の最大の強みだと私は確信しております」と話した。

 また、600eについて「16年間愛され続けてきた500の歴史に100、イタリア語では“チェント”を足した名前、セイチェントという名前のクルマが加わります。そのセイチェントというのはいったいどういう意味を持つのでしょう。このセイチェントは、チンクエチェントの最大の魅力である“カワイイ”を引き継ぎながら、チンクエチェントにはないゆったりとした居住性、そしてファミリー、ご家族の方々でも使いやすいラゲッジルームなど、多くの機能、ワクワクを搭載しております。このセイチェントは、未来のStellantisジャパンをリードするクルマ、まさに今日この瞬間から私どもが切り開く新しい時代の力強いステップとなると私は信じております」と紹介した。

 続けて、Stellantisジャパン プロダクトスペシャリスト 児玉英之氏が600eに関する説明を実施。当初は500eのプラットフォームを拡張し、サイズアップをした500の5ドアというコンセプトで開発を開始したが、開発を進めるうちにただ500eをサイズアップするのではなく、新たなコンセプトを打ち出すことに方向転換。500+100をキーコンセプトとして、500の派生モデルとしてではなく、新しいプラットフォームを採用して600eは誕生したという。

 サイズに関しては、フィアットは日本市場においてこれまでAセグメントに強みを有しており、市場規模の大きいBセグメントに新たに600eを投入することで、多くの人に訴求。ボディサイズは4200×1780×1595mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2560mmと、とりまわしのいいサイズ感を実現。コンパクトなサイズながらラゲッジルーム容量は360L、後部座席を倒すと最大1231Lの収容力を確保しており、多くの荷物を搭載可能としている。

 安全装備に関しては、360度パーキングセンサーやブラインドスポットモニターなどを搭載。さらに、新しくレーンポジションアシスト機能を追加することで、ADASレベル2に対応可能となった。

 そのほかにも、リアバンパー付近に足を入れるとトランクゲートが開く「ハンズフリーパワーリフトゲート」、ドライバーの疲労を軽減するマッサージ機能の「アクティブランバーサポート」、車両周囲1mから遠ざかると自動施錠、車両周囲3m以内に接近すると自動解錠される「キーレスエントリー(プロキシミティセンサー付)」といった新機能が採用された。

 プラットフォームはダウンサイジングを図り、静粛性を意図して設計されたというCMPと呼ばれるコモンモジュラープラットフォームを採用。バッテリはこれまでの50kWhから54kWhに拡大するとともに、バッテリマネジメントシステムを効率化することで、航続距離を従来の約2割増となる約493km(WLTCモード)を実現した。

 ボディカラーはイタリアの太陽をイメージした「サンセットオレンジ」、イタリアの空をイメージした「スカイブルー」と、「ホワイト」の3色を用意。導入グレードは最上級グレードとなる「La Prima」の1グレードのみとなり、65万円のCEV補助金を受けられるとのこと。

 児玉氏は最後に「欧州で発表されているセイチェントのハイブリッド、マイルドハイブリッドのモデルに関しては、2025年春ごろの導入を計画しております」と明かした。

■ デザインは初代600をオマージュしつつ、現代性を付与

 今回の発表会のために来日しているStellantisグループ フィアット・ブランド チーフデザイナー フランソワ・ルボワンヌ氏がデザインに関するプレゼンテーションを実施。

「時代を超越したデザインの定義においてプロポーションの果たす役割は重要」と述べ、妹モデルとなる500と比べて600eはプロポーションをより強調し、広い室内空間を表現するとともに、より長いキャビン、より長いデイライトオープニングなどが用いられたと説明。さらに、コンパクトさを維持しつつも、短いオーバーハングと丸みを帯びたコーナーで全体のラウンド感を強調。ボンネットはキャビンの大きさとのバランスと美しいプロポーションを保つために長めとし、車体はダイナミズムを高めるためにわずかにウェッジを強めているとした。

 加えて、ホイールとボディの比率を最適化することによって、軽快なバランスと力強いスタンスを実現。クルマをできるだけシンプルにするために、表面をクリーンにし、ホイールアーチを強調したとのこと。

 さらに、「ディティールの1つひとつが初代セイチェントへのオマージュとなっています」と話し、ライトやトランク、ドアハンドルなどのディテールなども、初代のセイチェントを彷彿とさせるものとなっていると紹介した。

 フロントフェイスは500の人懐っこさを反映した表現を目指したといい、特徴的なチークとスマイルはチンクエチェントで採用された“カワイイ”というアプローチを踏襲。大きな目はフロントに現代性をもたらす精密なフラッシュ仕上げとしたほか、フロントグリルやリアランプ、ダイヤモンドカットアルミホイールに同じピクセルパターンを使用することで、新時代を象徴するデザインのデジタル化を表現した。

 インテリアは、「DOLCE VITA」の居住空間を車内に再現するというコンセプトとし、アイボリーのシートにはターコイズブルーの刺繍が施されるとともに、フィアットのロゴパターンをエンボス加工で表現したグラフィックが取り入れられた。また、ステアリングはオリジナルの600を想起させる2本スポークとし、フィアットのデザインを導く本物のシンプルさを表現したと説明した。

 最後にStellantisジャパン ブランドマネージャー 熊崎陽子氏が登場し、コミュニケーション戦略について説明。20代や30代といった若年層の購入意欲が高く、デザインにこだわる人が多いという調査結果から、ターゲット層はデザインにこだわるヤングファミリーとし、フィアットが似合うユーザーが日常を楽しむ場所として選ばれた二子玉川の二子玉川ライズで、9月10日~23日の期間限定イベント「FIAT CIAO 600e FESTA」を開催。「600eの発売をきっかけにさらにファン層を広げ、DOLCE VITA、甘い生活を多くの方に楽しんでいただきたいと考えています」と述べた。