生活に不可欠な仕事ほど「給料が低く」「劣悪な労働環境」に置かれてしまう「構造的理由」

AI要約

「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」はなぜ給料がいいのか? その背景にはわたしたちの労働観が関係していた。ロングセラー『ブルシット・ジョブの謎』が明らかにする世界的現象の謎とは?

「エッセンシャル・ワーク」ないし「エッセンシャル・ワーカー」という概念がCOVID19パンデミックの影響で浮上。グレーバーの主張を裏づける事実にもなっている。

パンデミック状況下で経済活動の減少がわかる実験が可能になり、これまで経済が止まることの不可能性を体感。経済活動の低下率が予想よりも小さかったことが驚き。

生活に不可欠な仕事ほど「給料が低く」「劣悪な労働環境」に置かれてしまう「構造的理由」

「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」はなぜエッセンシャル・ワークよりも給料がいいのか? その背景にはわたしたちの労働観が関係していた?ロングセラー『ブルシット・ジョブの謎』が明らかにする世界的現象の謎とは?

「エッセンシャル・ワーク」ないし「エッセンシャル・ワーカー」という概念が浮上してきたのは、もちろん、COVID19パンデミックのもたらした「ロックダウン」、日本では「自粛」状況です。

それがグレーバーのかねてよりのBSJについての主張を事実によって裏づけたという感もあり、「エッセンシャル・ワーカー」という概念にひそむ認識と共振したようにもみえます。グレーバーはずっと「必要のない仕事は存在する」と論じてきました。とはいえ、「経済」を止める以外に、この世界が回っていくのになにが必要か必要でないかをみきわめる方法はありません。

だから、「経済」が停止するという事態は、実験が不可能な社会科学的領域において、そうそうある機会ではなかったのです。ところが、このパンデミック状況が、皮肉なことに、それを可能にしました。

グレーバーは、パンデミック初期、2020年5月のインタビューでこう述べています。

長いこと、世界中の政府が、こんなことなんてありえないとわたしたちに説きつづけてきました。

すなわち、ほとんどすべての経済活動が停止すること、国境を閉鎖すること、そして世界規模で緊急事態が宣言されることです。

3カ月ほどまえまでは、GDPが1%減少しただけでも大惨事になるとだれもが予想していました。ゴジラみたいな経済的怪物に、わたしたちが押しつぶされてしまうかのように、です(中略)。

ところが、だれもが自宅でじっとしていましたが、経済活動の減少はたった3分の1です。すでにこれ自体、ぶっとんでますよね。だれもが自宅にじっとして、なにもしないとすれば、経済活動は少なくとも80%ぐらいは低下するようにふつう考えませんか。

ところが3分の1なんです。いったい、経済を測定する尺度ってなんですか?