米SDI、ベトナム・カナダ・メキシコなど10カ国の表面処理鋼板をAD提訴。日本の薄板輸出にも間接的影響

AI要約

米国の鉄鋼大手が10カ国から輸入される表面処理鋼板に対しアンチダンピング提訴と補助金に対する相殺関税提訴を行った。

提訴対象は世界各国であり、対米輸出が困難になる可能性があり、日本の薄板輸出などにも影響が出る見込み。

米国内の表面処理鋼板需要が高まり、輸入鋼材を締め出す動きが強まっている状況。

 米国電炉大手のスチール・ダイナミクス(SDI)は5日、カナダやメキシコ、ベトナム、ブラジルなど10カ国から輸入される表面処理鋼板をアンチダンピング(反不当廉売=AD)提訴したと発表した。不当な補助金に対する相殺関税(CVD)でもカナダ、メキシコ、ベトナム、ブラジルの4カ国を併せて提訴。今後、商務省や国際貿易委員会(ITC)が調査を開始するか判断する。

 AD提訴は先の4カ国のほか豪州、オランダ、南アフリカ共和国、台湾、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)が対象。すでに米は表面処理鋼板で日本や中国、韓国などにAD措置を適用しているが、SDIは薄板リローラーが輸出を増やしているベトナムやUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)で鉄鋼輸入が多い北米隣国にも措置を広げる狙いだ。

 発動すれば対米輸出が難しくなり、他の市場へ表面処理鋼板が還流する「ダイバージョン」や、薄板リローラーの稼働率低下を招きそうで、日本の薄板輸出にも間接的な影響が避けられない。またベトナム材は米市場でも有力な輸入ソースとなっていただけに、サプライチェーン上の影響が大きそうだ。

 米では、めっき鋼板や塗装鋼板など表面処理鋼板の需要が年間2千万ネットトンを超え、地場鉄鋼メーカーによる能力増強が盛んに行われてきた。SDIもガルバリウム鋼板やカラー鋼板の新ラインを設けてきたが、競争も激しくなり輸入鋼材を締め出そうとする動きは7月ごろから浮上していた。

 SDIは、対象10カ国からの表面処理鋼板輸入が2024年上期に前年同期比57%増え、200万ネットトンに迫る高水準だったと指摘。バリー・シュナイダー社長兼COOは声明で「不当な輸入材の急増は、米国内鉄鋼業の生産、価格、利益に重大な悪影響を及ぼしており、提訴は不可欠となった」としている。