トヨタのサブスク、キントが始めた最大8万円分サポートの背景を小寺信也社長が詳説

AI要約

トヨタ自動車の展開するクルマのサブスクリプションサービスを担うKINTO(キント)が、アップグレードアイテムの購入費用を最大8万円分サポートするサービスを発表。

小寺社長は、キントのサブスクリプションサービスの成長と今後の展望について説明。

キントはハードウェアアップグレードに対応するUグレード車種のサービスを提供し、コネクテッド、UIのデジタル化などの価値提供に注力している。

現在、アップグレード済みの車両が約2%であり、課題としてサービスの広がりを模索している。

キントはコネクテッドドライブトレーナーを通じてユーザーの運転データを収集し、安全やエコにつながるポイントを提供。

また、UIのデジタル化に取り組み、スマホアプリを通じたガイダンスサービスを展開中。

キントが提供するサービスをより多くのユーザーに普及させるために、アップグレードアイテムのサポートサービスを開始し、クルマの運転をより安全かつ環境にやさしいものにする取り組みを強化している。

トヨタのサブスク、キントが始めた最大8万円分サポートの背景を小寺信也社長が詳説

■ トヨタのサブスクリプション、キント

 トヨタ自動車の展開するクルマのサブスクリプションサービスを担うKINTO(キント)。そのKINTOは8月30日に、ハードウェアアップグレード可能な「プリウス」「ヤリス」「ヤリスクロス」のUグレード向けに、アップグレードアイテムの購入費用を最大8万円分サポートするサービスを発表した。このサービスは、9月1日~11月30日の間に上記3車種を新規契約した人を対象にしている。キント 代表取締役社長 小寺信也氏は同日オンラインで会見。このサービスの狙いについて説明を行なった。

 小寺社長は、キントのサブスクリプションサービスの累計申し込み件数について、2019年の開始以来2024年7月末で12.5万件に達したと紹介。キントは2019年1月11日の設立以降扱う車種を増やしており、現在ではハードウェアアップグレードに対応するUグレードほか、多彩な車種が用意されている。

 小寺社長はキントについて、「従来のお客さまと販売店の関係をベースにしながらも、お客さまとクルマをより直接的に結ぶ関係を構築したい」という。その要素は「アップグレード」「コネクティッド」「UIのデジタル化」の3つで、将来のクルマのSDV化を考え、活用基盤として3つの価値提供が必要になると考えているとのこと。これらは「オンラインのプラットフォームを持つキントだからこそ」できることだとし、キントの役割の1つにトヨタに先駆けて価値提供を磨き上げていくことがあると語った。

 キントではトヨタの一般販売車種向けに「KINTO FACTORY」というカスタマイズサービスを行なっており、現在90種に達するという。このサービスをベースに、「KINTO Unlimited」ではハードウェアアップグレードと2025年に開始予定のソフトウェアアップグレードの両方を可能としている。

 このアップグレードに対応する車種が前述のプリウス、ヤリス、ヤリスクロスのUグレードとなり、ハードウェアアップグレードはキントのECサイトから購入する形で、今後始まるソフトウェアアップグレードは月額のサブスクリプション価格に組み込む形で提供していく。

■ 課題は「広がり」、現時点のアップグレード済み車両は約2%

 このアップグレードサービスの販売期間は1年半ほど。小寺社長は、約1年でUグレードを販売した中で、アップグレードサービスの利用率は約2%だという。「大きいのか、小さいのか? これを評価するのは難しいところ」(小寺社長)とのことだが、「実際にアップグレードアイテムを購入したお客さまからはポジティブな声をいただいている」という。手応えを感じており、もっと一般的なサービスとして育てていきたいと語った。

「コネクティッド」の部分については、コネクティッドドライブトレーナーという車両からお客さまの運転データを収集・分析するサービスを提供。キントでは略してCDTと呼ばれており、安全やエコにつながるポイントをKINTO Unlimitedアプリを通じて提供している。

 このアプリは今年度中のバージョンアップを予定しており、ユーザーの運転技能向上に資するトレーニング機能を拡充していく。さらにこの機能については、トヨタやレクサスの車両への導入も検討しており、トヨタ自動車と一緒になって進めていくとした。

 キントでは、CDT利用者の安全やエコへの寄与を分析しており、サンプル数は少ないものの、事故あたりの保険金金額の低下、燃費の向上が出ているという。ただし、ここに本当に相関関係があるのかという点については、さらに深掘りして検討中とし、その上でさらなる展開も考えているとのこと。

 現在、ブロックチェーン技術であるNFTを使い、安全運転の記録を残すトライアルを行なっており、人にひもづく安全運転の検討、中古車市場流通への要素など、データをしっかり結びつけることで活用を図る。

 UIのデジタル化については、スマホアプリ「これなにガイド」を提供。これはステアリングまわりをスマホのカメラでかざすとスイッチの使い方などガイダンスが出るもので、文字や絵による説明だけでなくYouTubeでの映像による説明映像も用意。利用者からは好評を得ているという。

 この機能は販売店にも好評で、納車時にすべて説明できないほど多機能化したクルマの説明を簡易化でき、「これなにガイド」をお客さまに案内しているという。

 これはキントで作成しているアプリになるが、トヨタのほうからも問い合わせが入っており、車種や適用範囲を拡大していく。

 具体的に8月30日からはプリウスにおいてガイド範囲を拡大、ヤリスには2024年10月ごろから提供、ヤリス クロスには2024年12月ごろにから提供する予定だという。

 これらのサービスのベースとなるのが、KINTO Unlimitedで提供しているプリウスのUグレード。現在、キント全体の20%を占める大事なクルマであるという。

 このUグレードによるアップデート体験を多くの人に体験してもらうために発表されたのが先述のアップグレードアイテムの購入費用を最大8万円分サポートするサービスで、プリウス、ヤリス、ヤリスクロスで展開していく。

 小寺社長はその一例として、3車種共通で可能なデジタルキーを挙げ、後からデジタルキーへアップグレードこともできるほか、納車時に施工することも可能な柔軟性があると説明した。

 キントの最終的に目指すところとして小寺社長は、「お客さまとアプリでつながり続け、アップグレードとアプリの技術を使ってクルマの運転をより安全にする、よりよい燃費を実現してCO2を低減する」ことを挙げ、「サービスの基盤となるKINTO Unlimitedをもっと多くのお客さまに体験していただきたい」と、キャンペーンの背景にあるものを語る。

 小寺社長は、「キントは時代に先駆けて新たな価値を次々に提供するモビリティプラットフォーマーを目指す」のが役割と位置付けており、「その軸をぶらすことなく、これからも全力で走っていこうと思っております」と説明を結んだ。