定年を迎える前に絶対知っておきたい。退職金は「一時金」で受け取るのと「年金」で受け取るのとではどちらがお得?

AI要約

退職金の受け取り方法には一時金受け取りと年金受け取りの2つがあります。

一時金受け取りでは税制面で優遇されるが、予想以上に使い過ぎてしまうリスクがある。

年金受け取りでは受取総額が多くなるが、税金や保険料の負担がかかることもある。

定年を迎える前に絶対知っておきたい。退職金は「一時金」で受け取るのと「年金」で受け取るのとではどちらがお得?

退職金は、一括で受け取る「一時金受け取り」と年金として受け取る「年金受け取り」の2つの受け取り方法があります。本記事では、それぞれの違いを比較し、税制面やライフプランに対する影響、受け取り方のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

まずは、退職金の目安金額について見ていきましょう。

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職金の給付額は図表1のとおりです。

図表1

出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」より筆者作成

高校卒に比べると、大学・大学院卒のほうが退職金は高くなっています。また、同じ高校卒でも技能労務職である現業職の場合には、退職金が低いのが特徴です。

退職金を一時金として一括で受け取ることによって、税金面で優遇されるのがメリットです。所得が多くなるほど税率が高くなる超過累進課税が一般的となっています。しかし、退職金の場合には、長年の勤務に対する報酬として扱われるため、金額が大きかったとしても税負担が重くなりません。

しかし、大きな金額を一度に受け取ることになるため、予想以上に使い過ぎてしまうといったリスクもあります。

退職金を年金として受け取る場合には、一時金受け取りよりも受取総額が多くなるのがメリットです。まだ受け取っていない分の年金について、一定の利率で運用すると想定した場合の運用益が上乗せされるため、受取総額が多くなります。

また、年金受け取りの場合は分割して受け取るため、大きなお金を手にしたために使い過ぎてしまうリスクが少ないこともメリットの一つです。

ただし、年金額に応じた公的年金等控除の対象となるため、控除を超えた分は雑所得として扱われ、所得税・住民税の課税対象となります。さらに、国民健康保険や介護保険等の保険料の負担が重くなるケースもあるため、注意が必要です。

これまで説明したとおり、退職金の受け取り方法は一時金受け取りと年金受け取りがあります。また、一時金受け取りと年金受け取りを併用できるケースもあるため、自分に合った選択をすることが重要です。

本項では、勤続年数40年、退職金1800万円としてそれぞれの受け取り方法別に見ていきましょう。

一時金受け取りの場合、退職所得が所得税・住民税の対象になります。退職所得は、次の式で計算されます。

●退職所得=(退職金額-退職所得控除額)×1/2

●退職所得控除額(勤続20年以下):40万円×勤続年数

●退職所得控除額(勤続20年超のとき):800万円+70万円×(勤続年数-20年)

勤続年数が40年の場合には、退職所得控除額が800万円+70万円×20年=2200万円となるため、課税されません。

年金受け取りの場合、雑所得として扱われます。雑所得の場合には、企業年金や公的年金が含まれるため、合算して税金が計算されるのが特徴です。一時金受け取りよりも総額が多くなるものの、退職金にかかる税金に加えて、社会保険料の負担がかかることも考慮しておきましょう。

自身の状況によっては、一時金受け取りと年金受け取りを併用するほうがお得なケースもあります。それぞれに退職所得控除と公的年金等控除のどちらも活用できるため、条件を確認したうえで金額分配を決定してみましょう。