アフリカのTV司会者から全額奨学金で米国大へ、31歳起業家が手がける「海外送金アプリ」

AI要約

タンザニア出身の起業家が立ち上げた海外送金アプリNALAは、今年7月に4000万ドルを調達し、成長を続けている。

フェルナンデスは、ナラを再構築し、アフリカからの送金を世界中の多くの国に可能にした。アフリカの送金市場は大きな成長を見せている。

資金調達を通じて、ナラは南アジア市場やラテンアメリカ市場に進出計画を進め、グローバル企業向けの決済インフラの開発を加速している。

アフリカのTV司会者から全額奨学金で米国大へ、31歳起業家が手がける「海外送金アプリ」

タンザニア出身の起業家が立ち上げた海外送金アプリのNALA(ナラ)は、今年7月に4000万ドル(約58億円)を調達した。同社は、アフリカで事業を行う企業向けのB2B決済プラットフォームの構築に加えて、個人や企業がアフリカへ送金する際のコスト削減と信頼性の向上という2つの目標を達成しようとしている。

現在31歳のベンジャミン・フェルナンデスは、2018年にフィンテック企業のナラを立ち上げ、母国タンザニアでの送金を迅速化しようとした。しかし、スタンフォード大学でMBAを取得した元テレビ司会者の彼は、次の2年間でいくつかの大きな困難に直面した。

まず、タンザニア最大の通信事業者がナラに対して停止命令を出し、送金に使用していた主要インフラへのアクセスを遮断した。次に、2019年に5度の試みの末にYコンビネータへの参加を果たしたが、デモデイの一週間前になって共同創業者が離脱した。さらに、2020年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックにより、ナラの国内決済サービスに対する需要は大きく落ち込んだ。

しかし、フェルナンデスは次の2年間で、ナラを国境を越えた送金サービスとして再構築した。現在、このサービスは米国と20のヨーロッパ諸国で働くアフリカからの出稼ぎ労働者や移民が、ケニアやナイジェリア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダなど11のアフリカ諸国に送金をできるようにしている。同社の登録顧客数は、50万人を超えているが、その全てがアフリカ以外に居住している。

ナラはこの分野の唯一のプレーヤーではなく、常に最安値のサービスを提供している訳ではないが、ターゲット市場のニーズに沿った追加機能を提供している。「私たちが気づいたのは、ディアスポラ(移民)はお金の管理を重要視しているということだ」とフェルナンデスは語る。

海外送金は、アフリカで成長中のビジネスだ。国連はアフリカの人口が2050年までにほぼ倍増して25億人に達し、世界中の就業年齢人口のほぼ4分の1がこの大陸で生まれると予測している。そして、毎年約100万人のアフリカ人が仕事を求めて外国に移住している。

■評価額は2億ドル

しかし、フェルナンデスにはさらに大きな計画がある。100人規模のスタートアップであるナラは7月に、フィンテック市場が低迷する中で、4000万ドル(約58億円)を調達し、関係筋によると評価額は2億ドル(約290億円)を超えたという。このラウンドは、サンフランシスコを拠点とするベンチャーキャピタル(VC)のAcrew Capitalが主導し、テキサスの投資会社Amploや、DSTグローバルのパートナーによる50億ドル(約7266億円)規模の個人ファンドが参加した。

そして、この資金調達は、現在の事業を維持するためのものではなかった。ナラの収益は、2023年に1500万ドル(約21億8000万円)を超え、今年2月には米国会計基準のGAAPベースで黒字化を果たしたとフェルナンデスは述べている。彼は、新たな資金を用いて2つの方法で成長を目指している。まず、ナラはコンシューマー向けの送金ビジネスをインドやパキスタン、フィリピンなどの南アジア市場に拡大し、次にラテンアメリカへ進出する計画だ。

次に、この資金を用いてより多くのライセンスを取得し、グローバル企業向けに設計された国境を越えたB2Bの決済インフラであるRafiki(ラフィキ)の開発を進めようとしている(ラフィキとはスワヒリ語で友達を意味する)。フェルナンデスによれば、アフリカの決済インフラは現在、潜在的な規模のわずか1%に過ぎず、規制の問題や為替の変動、競争の制限、グローバル企業向けの決済インフラの欠如により、「送金に最もコストがかかる大陸」であり続けているという。