堂島取引所「コメ指数先物」取引が始動、なぜ米の価格はこれほど上がったのか?

AI要約

コメ指数先物が始まり、高騰する米価の解決策として期待されている。

スーパーでの米不足が続く中、コメの需要が高まり価格が上昇している。

政治的にも不透明な米価決定に対し、新たな取引が課題解決の糸口となる可能性がある。

堂島取引所「コメ指数先物」取引が始動、なぜ米の価格はこれほど上がったのか?

 米の値上がりとスーパーのコメ不足に出口が見えない。そんなさなかの8月13日、「コメ指数先物」という新たな取引が大阪の堂島取引所で始まり、初日に60キロ当たり1万7,200円という高値を付けた。この取引がもっと早く始まっていれば、今年の米価はこれほど上がらなかったかもしれない。コメ先物取引では、最長で1年以内の将来の決めた日に、あらかじめ決めた価格で、コメを売買する契約を結ぶ。コメには、価格の決まり方が政治的で不透明という問題がある。新たなコメ先物は、積年の課題を解決できるのか。

1ページ目を1分でまとめた動画

 スーパーの棚から米袋が消えて久しい。去年の猛暑により、新潟や東北の米どころの一等米はもともと不足気味だった。その影響で新米と入れ替わるまでの端境期に品薄が目立つようになり、ニュースで騒がれたことで買い占める消費者が出てきた。さらに8月8日から1週間にわたって気象庁が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を出したことがダメ押しになった。

 買い占めが激化し、スーパーでは普通のコメより早く流通する早場米を入荷しても、すぐさま売り切れてしまう。棚がガラ空きになるのはまずいと、パックライスや切り餅を目立つ場所に置くのは当たり前。米びつに入れるトウガラシはまだ分かるが、苦肉の策で竹炭まで並べる店舗が出ている。ごはんと一緒に炊くとおいしくなるという説明書きがあったが、肝心のコメがないのだから何とも苦しい。

 これだけ目に見える形でコメの需要が高まっては、価格は当然上がる。JAが生産者の出荷に際して支払う「生産者概算金」は、全国でつり上がっている。出荷の早い鹿児島の概算金は1万9,000円台で、前年に比べて6,000円高い。

 あまりに高いので、米業界では農水省が概算金が上がり過ぎないよう介入するのではとの臆測が7月に飛び交っていた。現実はそうならず、農水省は静観を決め込んでいる。坂本 哲志農水大臣は7月19日の定例会見で次の発言をしている。

各産地における令和6年産米の概算金の設定状況等について、引き続き報道等を注視してまいります。私自身は、需給が引き締まっているということで、特段、これによってさまざまな対応をするというような状況にはないと思っています

 全国の産地が参考にするのが、関東の大産地で、早場米地帯である千葉の概算金だ。JA全農ちばは7月末、概算金を前年比60キロ当たり4,000円台の値上げと決めた。続いて発表されている米どころの概算金は、60キロ当たり3,000円台くらいの値上げとなっている。

 この価格設定に、米業界の関係者からは「高いけれど、このくらいの値上がりで収まって良かった」とか「高くしないと、今年は農家がコメを売ってくれない」、「米価が上がる分、反動で消費が減るのが心配」といった声が聞かれる。

 ここまで読んでお気づきかもしれないが、米価の決まり方は手探りで、その年の夏の雰囲気に左右される上、しばしば政治が介入する。今年の概算金にしても、なぜこの上げ幅なのか、正確に説明できる人はいないはずだ。

 プライスメーカーは、コメの集荷率が全国平均で54%(2023年産米)にのぼるJA。その価格の決め方は不透明だと長年指摘されている。