お墓から離れたところに住んでいて…「墓の移転・墓守の引き継ぎ」にはどのような手続きが必要か? 法的な解釈を踏まえて解説

AI要約

お墓を近くに移すためには、墓地使用契約を終了させる必要があり、契約終了後は原状回復義務や遺骨の扱いに注意が必要。

墓守を弟夫婦に継がせる場合は、お寺の承認が必要であり、檀家としての条件も考慮する必要がある。

具体的な手続きや許可に関しては、お寺や役所に相談することが重要。

お墓から離れたところに住んでいて…「墓の移転・墓守の引き継ぎ」にはどのような手続きが必要か? 法的な解釈を踏まえて解説

 定期的に墓参りをしたくても、離れたところに住んでいるからなかなか行けないという人もいるだろう。そういった場合、お墓を近くに移すにはどうすればいいのだろうか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【質問】

 お墓のことで相談です。現在、お墓から離れたところに住んでいるため、なかなかお墓に行くことができません。お墓を住まいの近くに移すにはどうしたらよいのでしょうか。

 また、お墓は移さず、近くに住んでいる弟夫婦に墓守を継いでもらうことは可能でしょうか。

 それぞれどのような手続きが必要か教えてください。(千葉県・60才・主婦)

【回答】

 お墓の使用契約などがあればそれに従って判断されますが、言及がないので、今回は“昔ながらの寺の檀家の墓で、特に契約書などはない”という前提で検討します。

 まず、お墓を移す場合です。あなたがお墓を墓地に置いている関係は、墓地の経営者であるお寺との間で、墓地の特定の区画を墳墓として使用する契約を締結していることによります。

 墓地の移転とは、檀家をやめて使用契約を終了させることですから、その意思表示をお寺に申し出ることになります。

 墓地使用権の性格については諸説ありますが、信教の自由の原則から、使用者の方から申し出をすれば終了できることを否定するような見解はないと思います。つまり、お寺に申し出ることで契約関係は終了させられます。

 しかし、使用契約が終了すると借主には原状回復義務が生じますので、使用していたお墓の区画にある墓石などの施設を撤去して、更地にしてお寺に返すことが求められます。

 そのほか、墓地特有の問題があります。お墓の中には遺骨が埋蔵されていますが、更地にするため遺骨を持ち出さなくてはなりません。埋蔵された遺骨を新しいお墓に移すことは、墓地埋葬法の定める「改葬」にあたり、市町村長の許可がないとできません。

 許可を受けるにあたっては、墓地経営者の埋蔵証明書の提出が求められますので、お寺の協力が必要です。具体的な手続きについてはお寺や役所に相談してください。

 次に、お墓を移さないで、墓守を弟夫婦に継いでもらう場合ですが、墓は祭祀財産という特別な財産で、祭祀の主宰者が継承する財産です。弟さんにこれを引き継いでもらう場合、墓地の使用は墓地経営者との契約になりますから、使用者の地位の承継になりますが、お寺に認めてもらわなければなりません。

 この点、お寺の墓地はお寺の宗教活動という一面をもっています。お寺の信者として檀家がお墓を置いて、お寺の宗旨を信仰し、お寺を護持する関係にあります。ですから、弟夫妻がお寺の承諾を得て墓守を引き継ぐためには、檀家になることが条件になると思います。弟さんと相談してください。

【プロフィール】

竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※女性セブン2024年9月5日号