「1人1日わずか6分の削減って、誤差の範囲では…?本当に何百億円もかけてやることなの?」経営者は「DXへの過大な期待」を今すぐ捨てるべきだ「効果が出ない」と悩む経営者に“足りない視点”は?
経営コンサルタントの大野隆司氏が、企業のDX支援に携わる中で増加する「DXの効果が出ない」という悩みについて解説している。
大手企業の多くがDXに取り組んでいる一方で、効果を享受できている企業は少ない現状が明らかになっている。
攻めのDXと守りのDXの効果の求め方の違いや、守りのDXにおける効果が出ない場合の要因について述べられている。
ローランド・ベルガー、KPMG FASなどでパートナーを務め、経営コンサルタントとして「40年の実績」を有し、「企業のDX支援」を多くてがけている大野隆司氏。
大野氏のところに届く「経営層からの相談内容」が、このところ大きく変化してきているという。「DXの効果が出ない」という悩みが目に見えて増えてきているというのだ。
なぜ、こうした悩みが生じているのか。大野氏が自身の経験や大手・中小企業の現状を交えながら解説していく。
■DXに取り組む企業に蔓延する「悩み」
大手コンサルティング・ファーム複数社の調査によれば、2023年度には大手企業のうち少なくとも6割から7割の企業が、全社的にDXに取り組んでいます。
企業によって狙う効果、取り組みの中身はまちまちではありますが、これだけの企業がDX化に着手しているのです。
一方で、ボストン コンサルティング グループ、PwC Japan、あずさ監査法人、独立行政法人情報処理推進機構の調査より作成したデータによれば、満足のいく効果を享受できている企業は1割強にとどまっている、という現状があります。
この数字を鑑みても、「DXの効果が出ない」という悩みは、私が相談を受けている企業に限らず、DX化に取り組む企業全般に共通したものと言えるでしょう。
■DX先進企業なのに効果が出ない!?
企業はどんな効果を求めて、DXに取り組んでいるのでしょうか。
DXで狙う効果は、主に以下の2つに集約されます。
①「攻めのDX」…新しい顧客・市場の獲得や新規事業の創出などで「トップラインの伸長」を狙うもの
②「守りのDX」…業務効率化による「コストの削減」を狙うもの
「①攻めのDX」は顧客心理をはじめとして、競合の動き、買収先企業の意思決定、マクロ的な経済情勢、天候やパンデミックといった、自社ではコントロールしづらい外部の影響が大きいため、効果の実現には不確実性を伴います。
片や、「②守りのDX」は、自社内での改革・改善が中心となるため、外部の影響が少なく、効果の発現が見込みやすいという特徴があります。
「効果が出ない」という悩みは、この「②守りのDX」についてが多いのです。