最低賃金、引き上げ「過去最高」も主要国になお見劣り 適切な目標設定や環境整備必要

AI要約

最低賃金の全国平均は毎年3%程度の引き上げが続いているが、依然として低い水準にとどまっている。

日本の最低賃金は国際標準に到達しておらず、他の国に比べても低い水準である。

政府は最低賃金を引き上げる目標を1500円までとしており、連合も大幅な水準引き上げを求めている。

最低賃金、引き上げ「過去最高」も主要国になお見劣り 適切な目標設定や環境整備必要

最低賃金の全国平均は平成28年度以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた令和2年度を除いて毎年3%程度の引き上げが続き、今年度の目安は過去最高の1054円となった。ただ、主要各国と比較すると依然として低い水準にとどまっているのが現状だ。一般労働者とパートタイマーなど非正規労働者の給与額に差が大きいためで、経済の好循環実現へ向けてはさらなる環境整備が求められる。

経済協力開発機構(OECD)の調査を基に内閣府が今年2月に公表したデータによると、フルタイムで働く正社員ら一般労働者の賃金中央値に対する最低賃金の比率で、2022年の日本は45・6%だった。15年には39・7%だったため、順調に伸長している。

一方、世界の基準はさらに高い。22年、ドイツは52・6%、英国は58%、フランスと韓国は60・9%といずれも日本を上回った。最新の数字が反映されていないことを考慮しても、日本の最低賃金は国際標準には到達していないのが現状だ。

政府は最低賃金を2030年代半ばまでに全国平均で1500円まで引き上げることを目標に掲げ、さらに今年に入り目標時期を前倒すと表明した。ただ、定量的な金額設定では物価上昇が続いた場合に恩恵が薄れることになる。連合は今年4月に厚生労働省へ提出した要請書で、最低賃金引き上げ目安の国際的な潮流は「一般労働者の賃金中央値の60%」であることを紹介し「(潮流を)念頭におきつつ、中期的に大幅な水準引き上げをめざす」べきとした。

賃金と物価の安定的な上昇には、経済情勢に合わせた適切な目標設定や制度設計が必要不可欠となる。(根本和哉)