メルセデスAMG GT 詳細データテスト 高まった安定性 神経質さの残るハンドリング 低い静粛性

AI要約

メルセデスAMGの2代目GTは、ポルシェ911と競合する上級スポーツカークラスで拍手を送りたい存在だ。しかし、本格パフォーマンスクーペの選択肢が少なくなっている中で、GTは新たな魅力を追求している。

新型GTは先代とは異なるレイアウトやテクノロジーを取り入れつつ、AMG独自のスポーティさと洗練を保ちつつ、長距離走行にも対応するバランスを目指して開発された。

エクステリアデザインからエンジン、サスペンションに至るまで、SLと共通点を持ちつつも、GTは自らのアイデンティティを確立し、スポーツカーエンスージアストを魅了する魅力を持つ。

メルセデスAMG GT 詳細データテスト 高まった安定性 神経質さの残るハンドリング 低い静粛性

ある意味、メルセデスAMGの2代目GTは存在するだけで拍手を送りたいクルマだ。上級スポーツカークラスは、ビジネス的には常にチャレンジだった。その理由のひとつが、このクラスではポルシェ911の人気が絶大すぎることだ。

また、最近になって本格パフォーマンスクーペが減ってきたことには、ほかにもより広い範囲に当てはまる理由がある。しかし、結局行き着くところは同じだ。選択肢の少なさである。ジャガーFタイプやアウディR8はリタイヤし、レクサスはLCの英国での販売を終了した。そのどれも、今のところ後継モデルの情報はない。

AMGがロングノーズに出し惜しみのないエンジンを積んだフラッグシップをフルモデルチェンジしたことは、おおいに歓迎すべきだ。たとえ価格が劇的に上がり、911に対抗すべく融通を効かせようとして初代の味を薄めてしまったとしても。

詳しくはこれから見ていくが、新たなレイアウトは奔放な初代GTにはなかったリアシートとフロントのドライブシャフトが加わった。それはプラスにもマイナスにもなりうる。

本当に知りたいのは、AMGが先代のエネルギッシュさと活発さをどうにか残しつつ、ヤンチャさを手懐け、よりGTカーらしい魅力的な長距離走行を手に入れようとしたのか、ということ。綱渡りのように微妙なバランスだが、もしも実現できれば、われわれをノックアウトするようなクルマが出来上がるはずだ。

メルセデスAMGは、2代目GTの開発を、R232世代のSLと並行して行うことにした。この2モデルはキャビンの構造や内装、エンジンやアルミスペースフレームの大部分をシェアしつつ、デザインや定義づけをはっきり分けた。スポーツカーのマーケットで手に入れうるシェアを最大化しようと試みたのだろう、と思うのではないだろうか。

だが、それは事実ではない。SLは2座の補助的なリアシートとパートタイム4WDシステムの4マチック+を備え、従来モデルより使い勝手を高めたかもしれないが、よりハードなAMG仕様のサスペンションを得てスポーティさを増したように感じられる。

GTはというと、多くは共通だ。先代は2シーターの後輪駆動だったが、新型はそれを捨てた。全車4WDとなり、全長は30cm近く伸びた。重量は250kg程度、2016年に計測したGT Sロードスターと今回のテスト車を比べれば、277kgの増量だ。800psオーバーのPHEVとなった、GT63 S Eパフォーマンスのような電動デバイスを一切持たないにもかかわらず、である。

サイズは増しても、エクステリアは先代との類似性が明らかだ。ワイドなロングノーズと力強く踏ん張ったテールは、ボディパネルやディテールがすべて変わっているにもかかわらず、2代目もすぐにAMG GTだとわからせてくれる。

エンジンもSLと同じく、チューニング違いで2タイプのAMG製4.0LツインターボV8を設定。英国未導入のGT55には475ps/71.3kg-m、今回のGT63は585ps/81.6kg-mだ。また、北米仕様などには、4気筒のGT43も存在する。

ギアボックスは、先代のリアマウントされたトランスアクスルDCTではなく、湿式クラッチを用いたスピードシフト9速ATをエンジン直後に搭載する。4.0LのV8ユニットは、インタークーラーの配置を変更し、吸排気ポートを改良。オイルパンを再設計し、クランクケースに放熱対策を加えた。

サスペンションは前後とも、アルミ素材を主体としたマルチリンク。SLのように、スプリングはスティールのコイルで、伸び側と縮み側それぞれにバルブを持つ新型アダプティブダンパーを装備する。

GT55とGT63には、AMGのアクティブライドコントロールを採用。これは、みごとだった先代のGTブラックシリーズで導入され、SL63にも与えられるシステムで、スタビライザーに代えて、各輪に設置した油圧アクチュエーターで車体の傾きをコントロールする。マクラーレン的に、各ダンパーは油圧で相互接続されている。

これにより、たとえば左前輪側のダンパーが縮むと、右前輪側は伸びる。圧を変えることもでき、強い圧をかければロール剛性は高まるし、逆も可能だ。

四輪操舵も標準装備。100km/hまで、最大2.5度の後輪操舵が可能だ。さらに、リアには電子制御LSDを搭載し、パワーをかけた際にもコースティング中にも可変ロッキング効果を発揮。ブレーキを用いたトルクベクタリングも採用している。

リアトランスアクスルを廃し、エンジンとトランスミッションを隣接させたことで、前後重量配分は大幅に変化した。先代は47:53だったが、新型は54:46だ。