「日本株大暴落」を増幅した隠れた重大要因、外国人投資家のヘッジ取引

AI要約

日本株の急落と円高の関連性について解説されている。アメリカ景気後退により円高が進み、外国人投資家の売りが円高をさらに加速させた可能性が指摘されている。

外国人投資家の日本株売りが円高を進めない理由について謎が指摘されており、これが株価下落を拡大させる要因であると考察されている。

外国人投資家が先物取引で円売り外貨買いをしていた可能性が示唆されており、これが為替レートへの影響を制御していた可能性が考えられている。

「日本株大暴落」を増幅した隠れた重大要因、外国人投資家のヘッジ取引

● 日本株だけが大幅下落 外国人投資家の売りがなぜ円高に?

 日経平均株価(終値)は、7月19日に4万円台だったのが、その後、下落を続け、8月5日には過去最大幅の下落となり3万1000円台まで下がり、歴史的と言われるほどに大きな下落になった。直近21日には3万8000円前後まで回復したとはいえ、不安定な動きが続く。

 米国株も急落したとはいえ、これだけの大幅下落はほぼ日本株だけの現象だ。なぜ日本株だけにこのように大きな変動が起きたのだろうか?

 直接の要因は、アメリカの景気後退によってFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げ幅が大きくなるという予想が広がり、日米金利差縮小を見越して、これまで円安を進めてきた円キャリー取引が巻き戻され、為替レートが円高方向に転換したことだ。

 円高は日本企業の収益を悪化させると考えられ、それが株価の下落幅を大きくしたと考えられる。

 このプロセスの中で大きな作用をしたのが、外国人投資家の日本株売りだ。

 だが本来なら円安に作用するはずの日本株売りなのに、なぜ円高が進んだのか?

● 海外からの日本株買い増えても円高にならず 日本株売られても円安でなく円高の“不思議”

 この問題を考えるには、まず、これまで進行してきた円安について分析する必要がある。

 2022年以降に歴史的な円安が進んだ原因として、円キャリー取引の増加があるとされる。アメリカの金利引き上げによって日米金利差が開いたため、円を売ってドル資産に投資する取引が進み、これが円安を進めたというのだ。確かにその通りだ。

 しかし同時に、外国投資家による日本株への投資も進んでいたことに注意が必要だ。

 中国経済の不調から、これまで対中投資に向かっていた資金が日本株に向かったといわれた。あるいは円安が続いたために日本株が割安になり、日本株への投資が進んだとも言われた。

 そして、こうした資金の流入が日本株価上昇の大きな原因であると言われた。日本株を動かしているのは外国人投資家だと言われたほどだ。これもその通りだろう。

 だが、外国人投資家の日本株投資が円を買うことによって行なわれていたのであれば、円高を進めたはずだ。なぜそうならず、円安が進んだのか? しかも、「歴史的」と言われるほど顕著な円安が進んだのか?

 「外国人が日本への投資を増やせば円高になる」というのは極めて当然のことなので、それと逆のことが起きたのは、無視できない重要な点だ。

 疑問はそれだけではない。いま日本株が暴落したので、外国人投資家も日本株を手放しているはずだ(これはデータで確かめることができる)。

 もし円を売って自国通貨に戻しているのなら、円安になるはずだ。しかし実際にはそうならずに円高が進んでいる。これはなぜだろうか?

 この点は、今回の暴落過程での大きな謎であるとともに重大な点だ。なぜなら、円高の進行が株価下落を拡大していると考えられるからだ。

● 外国人投資家は 円売り先物契約をしていた

 考えられる一つの理由は、外国人投資家による日本株への投資額が、円キャリー取引額よりずっと少ないことだ。もしそうであれば、為替レートへの影響はそれほど大きくなく、為替レートはほとんど円キャリー取引によって左右されたということが考えられる。

 しかし、今回の株価上昇は外国人投資家によって主導されたと言われたほど大きなものだった。それが為替レートに与える影響は無視してよいものではあるまい。

 外国人投資家による日本株への投資が為替レートに影響を与えなかった理由として考えられるのは、「外国人投資家が日本株を買うとき、同時に、将来時点での円売り外貨買いの先物取引を契約していた」ということだ。