イケイケ新任営業本部長が「実現不可能な売上高ノルマ」を強要…35歳課長が青ざめた未達成の部下への「衝撃の仕打ち」

AI要約
B山本部長が営業部門に達成困難な売上目標を定め、それを絶対達成を命じる行動を取ったA谷課長とメンバーは目標達成の難しさを指摘し反発した営業部門での目標設定と達成への問題が浮き彫りになった
イケイケ新任営業本部長が「実現不可能な売上高ノルマ」を強要…35歳課長が青ざめた未達成の部下への「衝撃の仕打ち」

営業の仕事に従事するさい、上司から売上目標を課されることは少なくない。しかし、その目標数値があまりに実現不可能で、かつ「絶対達成」を命じられた場合、ハラスメントにはあたらないのだろうか。本稿ではまず、社会保険労務士の木村政美氏による事例を見ていこう。

A谷さん(35歳)は首都圏で高級輸入食品の卸売販売業を営む甲社(従業員数100名)で食品担当営業課長をしている。甲社長(75歳)が30年前に会社を設立して以来、取扱商品の選定から新規取引先の開拓やフォロー、10年前からは小売業や他業種にも進出するなど尽力した結果、会社業績は順調に推移した。

しかし昨年末、突然大病を患い療養のために会社には週1日程度しか顔を出せなくなった。人事・総務関係は甲社長の実弟である専務(65歳)が取り仕切っているので問題はないが、甲社長が直接関わっていた営業面には大きな不安が残った。病気の回復が見込めないことと自身の年齢を考えた甲社長は専務と相談して、今年の6月甲社長の甥(実兄の子)であるB山さん(45歳)を入社させた。他社のトップセールスマンであったB山さんには営業本部長を任せ、ゆくゆくは後継者にすることも視野に入れていた。

B山本部長は就任翌日、管理職会議の席上でいきなり各部署の課長に担当職場の現状と昨年度の業績及び今年度の年間及び月間の成果目標を作成し、明日までに提出するよう指示を出した。

翌日の夕方、A谷課長は現状の活動報告と前年度及び今年4~5月の実績、今年度の月ごとの売上高目標を文書にまとめ、B山本部長に提出した。書類にさっと目を通したB山本部長は開口一番、

「まず前年度と今年4月、5月の売上実績があまりにも低すぎる。当然改善する必要があるのに、『6月の課内売上高目標6000万円』とは話にならん。もっとガンガン売りまくらないとダメだ」

と檄を飛ばし、その場で売上高目標値を1億2千万円に修正した。

「本部長、いくら何でも月の売上高を一気に2倍にしろだなんて無理ですよ、メンバーは私を含めて10人しかいないのに、目標値が1億超えなんて高すぎませんか?」

「いや、そんなことない。今までの目標値の設定が低すぎただけだ。こんなユルイ仕事じゃ他社に太刀打ちできないぞ。メンバー10人なら単純に考えて1人1200万円売ればいいんだから余裕でしょ?」

「しかし……」

「とにかく私が掲げた目標は絶対達成するように。どうすればクリアできるかを考え、個々のメンバーを説得しノルマを設定するのが課長である君の役目だよ。期待してるから早く席に戻って案を練りなさい」

A谷さんはその日の夕方、課内ミーティングの席上でB山本部長が掲げた6月の売上高目標を伝達し、

「急な話なので難しいとは思うが、どうすれば目標を達成できるかを今からみんなで考えよう」

と言ったが、メンバー達は口々に

「昨日の自己紹介によると、前職が大手企業のトップセールスマンだったらしいけど、会社の事情も知らないのにふざけるな。こんな目標、達成なんて無理」

などと反発した。