地方でメーカーに就職したらセクハラ地獄だった…新卒女子社員に40代男性上司が言い放ったゲス過ぎる一言
真理さんはセクハラとハラスメントに苦しむ中、過労や過酷な勤務形態にも耐えなければならなかった。
上司や同僚からの不適切な言動に対して、適切なサポートを得られずに孤立感を味わった真理さんは、会社を辞める直接のきっかけを求めていた。
現代社会におけるワークライフバランスの重要性や、セクハラ防止対策の不備による若手社員の退職問題が示唆されている。
若手社員はなぜ会社を辞めるのか? 入社して数年で、あるいは30代前後で転職を経験した人たちを、元新聞記者のライター、韓光勲氏と小山美砂氏がリレー執筆の形で紹介する連載「若手が会社を辞めるとき」。「若手社員が辞める理由」と「辞めた若手社員はどこへ行ったのか」を明らかにしていく。(JBpress)
(韓光勲:ライター、社会学研究者)
今回は、過労とハラスメントによるメンタル不調に陥った真理さん(29歳女性、仮名)の転職経験を紹介したい。
真理さんは奈良県出身で、関西の国立大学を2018年に卒業。就活には当初苦戦したが、「良い製品を作っている企業に行きたい」という軸を定め、メーカー系に応募した。内定が出たのは、九州に本社を置く大手メーカーだった。
2018年4月に入社後、人事部に配属された。初めて親元を離れての一人暮らしだった。真理さんは慣れない土地以上に、その会社の「男尊女卑」文化、上司からの露骨なセクハラに面食らうことになる。
■ セクハラを先輩に相談したら
「かわいかった。大好き。チュ」
入社から3カ月。総務部の10年目の男性から送られてきたメッセージの文面だ。その日は同期の女性、その男性との飲み会があり、酔ったその男性は真理さんの太ももを触り続けた。
嫌がる素振りを見せてもその男性は止めなかった。「怒らせたら何をされるか分からない」という恐怖もあり、はっきりと拒絶はできなかった。真理さんは場の雰囲気を壊さないように振る舞った。
人事部の先輩女性に相談した。その人からは「毎年新入社員が被害にあっている。あの人は変なところがあるから、これから関わらないように」と言われた。セクハラ被害にあったのに、具体的に動いてくれるわけではなかった。「今後は気を付けて」という助言だけで終わった。
「お前、紐パン似合いそうだよね」
これは入社から半年がたったころ、飲み会の場で、40代前半の男性上司から言われた言葉である。20歳以上年齢の離れた上司からの言葉に唖然とした。状況が呑み込めず、言葉が出なかった。「そんなことないですよ」と返すのが精いっぱいだった。男性からそのような言葉をかけられたことがなく、そういう目線で見られていたことにショックを受けた。
もう一度、先輩の女性に相談した。しかし、返ってきたのは「あの人はそういう人だからね。昔からそうだから、あまり気にしないでいいよ」という言葉だった。
セクハラを社内で通報しようとも考えたが、通報先は自身が所属する人事部。相談する先はなかった。人事部は労働組合に対する立場であり、労働組合に相談することもできない。そもそも、労働組合は弱く、人事部の言いなりになっていた。相談などもってのほかだった。
■ 過酷だった時間外労働
真理さんはひどいセクハラを受けていたが、会社を辞めようとは思わなかった。
「今考えると異常なのですが、当時は『自分が変なんだ。会社はこんなものだ』と思い込んでいて、適応しないといけないと思っていたんです」
会社を辞める直接のきっかけになったのは、その過酷な勤務形態だった。