株のプロが業績判断で利益よりも遥かに注目する1つの指標

AI要約

投資家向けのベストセラー「株トレ」シリーズの新刊が登場し、ファンダメンタルズ分析に焦点を当てている。

損益計算書を読む際に、利益率に着目する重要性が強調される。

トリドールHDとニトリHDの比較を通じて、外食業と小売業の特徴が明確に示され、ニトリHDの競争力が強調されている。

株のプロが業績判断で利益よりも遥かに注目する1つの指標

 個人投資家の間で大きな支持を集めるベストセラー『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』に、待望の続編『株トレ ファンダメンタルズ編』が発売した。前作はチャート分析がテーマだったが、今作は企業の業績や財務の読み方を中心とするファンダメンタルズ分析を扱う。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

● 利益よりも「利益率」に着目してほしい

 株式投資をするうえで、一番重要なのが損益計算書を読むことです。

 企業が1年間の営業活動を行った結果、生じる利益または損失を表すのが、損益計算書です。

 損益計算書を読む目的は何でしょうか。

 「増益か減益か?」まず、そこに目がいく人が多いと思います。

 確かにそれも見るべきポイントの1つには違いありません。ただし、実際には、もっと重要なポイントがあります。

 「利益率が高いか低いか?」

「利益率が上昇しているか、低下しているか?」

 私はまず、そこから見ます。なぜならば、そこに企業の「利益を生み出す力」が表れているからです。

● 投資の実力を磨く『株トレ』のクイズに挑戦!

 うどん店の丸亀製麺などを展開するトリドールHDと、家具・住居製品小売りニトリを展開するニトリHDの2024年3月期損益計算書が出ています。

 トリドールHDは、M社とN社のどっち?

● 【ヒント】外食業と小売業の違い

 小売業は、仕入れた商品を販売します。一方で外食業は、食事を提供する際に、調理・接客・片付けなどのサービスが必要です。

 ニトリHDは、小売業の中では、粗利率が高く、トリドールHDは、外食業の中では、粗利率が高い企業です。

 両社とも人手不足による人件費上昇が販管費の増加要因となっています。

 正解:トリドールHDはN社(ニトリHDはM社)

● 粗利率は、外食業のほうが高い

 外食業は、小売業と比較するとより高い粗利率が稼げます。調理やサービス(接客など)によって付加価値を高めやすいからです。

 外食業の粗利率は60~80%が一般的で、トリドールHDの粗利率(76%)は外食業の中でも高水準です。

 粉もの(うどん、そば、パスタ、お好み焼きなど小麦粉やそば粉を材料に使う料理)は、粗利が高くなります。調理による付加価値が大きいこと、材料の保管が容易で食材ロスが小さくなることが、粗利が高くなる理由です。

● 外食業は粗利率が高いが、販管費率も高い

 外食業は粗利率が高いものの、販管費率も高いため、営業利益率は低くなりがちです。

 外食業では、売上原価(主に食材費)の他に、さまざまなコスト(人件費・家賃・光熱費など)が発生します。

 トリドールHDは粗利率は高いのに営業利益率は5%しかありません。

 外食業と比較すると、小売業は相対的に販管費率を低く抑えることができます。

 小売業でも人件費・家賃・光熱費はかかりますが、外食業より低くなります。

 ニトリHDは、粗利率は低いものの、営業利益率は14.3%とトリドールHDより大幅に高くなっています。

● ニトリは小売業の優等生

 ニトリは小売業の優等生です。

 高い競争力を有するプライベートブランド品(独自開発の商品)中心の販売で、粗利率が小売業としてはきわめて高い水準です。

 小売業の競争力は、差別化されたプライベートブランド品をどれだけ持つかで決まります。ナショナルブランド品(メーカーブランド品)の販売では、高い粗利を稼ぐことができません。

 (本稿は、『株トレ ファンダメンタルズ編』から抜粋・編集したものです。)