個人投資家に人気の高配当株投資、銘柄選びに1つの落とし穴【株のプロが解説】

AI要約

著者の窪田真之氏が書いた『株トレ ファンダメンタルズ編』は、企業の業績や財務の読み方を中心としたファンダメンタルズ分析を扱っている。

日本株市場では、安定的に高い配当利回りを期待できる銘柄が増えており、長期的な保有と減配リスクの管理が重要だ。

記事では、JTとNTTが高い配当利回りと利益率を持ち、長期投資に向いている一方、JR東海はリニア新幹線の工事問題やロシア事業からの撤退リスクに注意が必要と述べられている。

個人投資家に人気の高配当株投資、銘柄選びに1つの落とし穴【株のプロが解説】

 株式投資をする人たちの間で人気を博す『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』に、待望の続編『株トレ ファンダメンタルズ編』が発売した。前作はチャート分析がテーマだったが、今作は企業の業績や財務の読み方を中心とするファンダメンタルズ分析を扱う。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

● 安定的に高配当利回りを期待できる銘柄が多い日本株

 株は値上がり益で稼ぐと思い込んでいる人が少なくありません。発想を転換してみましょう。

 今の日本株には、値上がりはあまり期待できなくとも、安定的に高い配当利回りを期待できる銘柄が増えています。

 ただし1つ注意が必要です。株の配当利回りは、確定利回りではありません。

 業績が悪化して減配になれば、利回りが低下します。株価が大きく下がる可能性もあります。

 単に予想配当利回りが高い銘柄を選ぶのではなく、長期的に保有して減配になりにくい銘柄を選ぶことが大切です。

● 投資の実力を磨く『株トレ』に挑戦!

 次の4社の売上高と営業利益、配当利回りの予想値が出ています。

 ・JT(2024年12月期)

・NTT(2025年3月期)

・JR東海(2025年3月期)

・東京電力HD(2025年3月期)

 C・D・E・F社は、それぞれどの会社?

● 【ヒント】 日本国政府が大株主だと株主への利益配分に積極的

 JTは財務大臣(保有比率37.57%)、NTTも財務大臣(同34.72%)が筆頭株主です。日本国政府が大株主の銘柄は株主への利益配分に積極的で、配当利回りが高くなる傾向があります。

 上場しているJR4社はかつて国有鉄道でしたが、今は完全民営化されて政府の保有はありません。

 正解:

C社ーJR東海

D社ーJT

E社ーNTT

F社ー東京電力HD

● 高配当利回りを狙った長期投資をするならどの銘柄?

 新幹線事業は、利益率が高いことに加え、成長性も見込める有望事業です。

 ただし、JR東海は配当利回りが低いので、高配当利回り株としての投資対象にはなりません。

 JR東海への投資を考える際に注意が必要なのは、リニア中央新幹線の工事が静岡県でストップしていることです。

 当初は開業時期を、品川―名古屋間が2027年、大阪までを2037年としていましたが、2027年の品川―名古屋間開業は間に合わないと断念しました。

 大阪までつながれば、東海道新幹線の補完だけでなく航空の代替需要が盛り上がる期待もあります。さらに、将来的には、リニア新幹線事業の海外展開も考えられます。

● JTとNTTは、配当利回りと利益率が高い

 JTは配当利回りが高く、利益率も高いので、高配当投資の候補となります。

 ただし、不安材料が2つあります。それは、同社のロシア事業の先行きと、次世代タバコのシェア争いです。

 ロシア経済と日米欧経済の分断が深まる中で、ロシア事業から撤退を余儀なくされる場合には、JTに大きな減損が発生して、減配になるリスクもあります。

 また、次世代タバコで米フィリップモリスの「アイコス」に競り負けていることも不安材料です。

 NTTは営業利益率が高く、配当利回りも魅力的で、長期投資の対象として良いと判断しています(2024年5月時点)。

 東京電力HDは無配で、配当利回りで投資する対象とはなりません。

 (本稿は、『株トレ ファンダメンタルズ編』から抜粋・編集したものです。)