多くの人が薄々と感じていた「格差」…年収300万円未満の家庭「体験ゼロの子どもたち」

AI要約

低所得家庭の子どもたちの約3人に1人が体験ゼロの状況であることが明らかになった。

世帯年収が低い家庭ほど体験ゼロの割合が高く、経済的な格差が体験の機会に影響を与えていることが示された。

所得が低い家庭では体験に支出する金額も少なく、経済格差が子どもたちの体験における不平等を拡大させている。

多くの人が薄々と感じていた「格差」…年収300万円未満の家庭「体験ゼロの子どもたち」

習い事や家族旅行は贅沢?子どもたちから何が奪われているのか?

低所得家庭の子どもの約3人に1人が「体験ゼロ」、人気の水泳と音楽で生じる格差、近所のお祭りにすら格差がある……いまの日本社会にはどのような「体験格差」の現実があり、解消するために何ができるのか。

発売即5刷が決まった話題書『体験格差』では、日本初の全国調査からこの社会で連鎖する「もうひとつの貧困」の実態に迫る。

*本記事は今井悠介『体験格差』から抜粋・再編集したものです。

ここからいよいよ、「体験格差」の全国調査の結果とその分析に入っていく。まず確認しておきたいのが「お金」と体験格差の関係、つまり、親の収入の大小と子どもの「体験」のあり方との関係だ。

経済的に一定の余裕のある家庭に生まれた子どもと、様々な費用を切り詰めながら生活せざるを得ない家庭に生まれた子ども、そうした「生まれ」の違いに伴い、子どもたちにとっての「体験」の機会には、どのような格差が存在しているのだろうか。

最初に、全体の中で「体験ゼロ」の子どもたちがどれだけいるのか、その割合を見ていくところから始めよう。

ここでいう「体験ゼロ」とは、私たちが調査の項目に含めた様々な学校外の体験が、直近1年間で「一つもない」ことを意味する。要するに、スポーツ系や文化系の習い事への参加もなければ、家族の旅行や地域のお祭りなどへの参加も含めて「何もない」ということだ。お金を払わなければ参加できないものが多いが、無料で参加できるものも含まれる。

「放課後の体験」も「休日の体験」もゼロ。あるいは有料であろうが無料であろうがゼロ。こうした「体験ゼロ」の子どもたちは、調査の結果、全体のおよそ15%を占めることがわかった。逆に言えば、残りの85%、つまり大多数の子どもたちは、少なくとも何らか一つの「体験」に参加する機会を得ていたことになる。

もちろん、「体験ゼロ」以外という形で括られる子どもたちの中には、動物園に一度行っただけという子どもから、週に何日も習い事に通い、旅行やキャンプにも何度も行っているという子どもまでが含まれている。その違いに目を向けることはもちろん重要だが、同時に、ゼロかゼロでないかの違いにも注目が必要だろう。

こうした「体験ゼロ」の子どもたちの割合を、家庭の世帯年収別にも見てみよう(グラフ2)。すると、世帯年収が低い家庭ほど、「体験ゼロ」の割合が高くなっていることがわかる。世帯年収が600万円以上の家庭だと「体験ゼロ」が11.3%であるのに対し、300万円未満の家庭では29.9%となった。つまり、2.6倍以上もの格差だ。

こうした経済的な格差は、各家庭が支払っている「体験」の平均的な年間支出額にも表れている(グラフ3)。世帯年収600万円以上の家庭のおよそ12万円に対して、300万円未満の家庭では5.5万円弱。具体的な金額の面でも、およそ2.2倍の格差が生じている。