座れりゃどれも一緒……じゃない! クルマのシートをわざわざ「高価なバケット」に交換する「多大なるメリット」とは

AI要約

シートの交換が必要な理由として、純正シートが万人にフィットしないため、使用目的や体型に合ったシートを選ぶ必要がある。

バケットシートは、セミバケットシートとフルバケットシートの2種類に分かれ、フルバケットシートは高い剛性感と軽量性が特徴的。

フルバケットシートの適切なポジションを構築することで疲れにくく、腰痛が起きにくい。BRIDEなどのメーカーでは、様々なサイズが用意されている。

座れりゃどれも一緒……じゃない! クルマのシートをわざわざ「高価なバケット」に交換する「多大なるメリット」とは

 シートをなぜ交換するのか。

 それは、それぞれのシートには適した使い方と目的があるから。その目的のために、ユーザーは交換という手段を選ぶ。オーソドックスな純正シートは小柄な女性から大柄な男性、そのどちらにも当てはまらない人まで、万人にフィットするように作られている。つまり、誰しもが乗れるようになっている。裏を返せば誰にもジャストフィットしないといえるかもしれない。それが純正シートに求められるスペックだ。

 純正シートはそのような仕立てなので、シートを社外品に交換することにより、自分のカラダや目的にマッチしたものにすることができる。そんなアフターパーツのシートとして広く知られているのが、バケットシートと呼ばれるタイプ。

 特徴は、カラダを包み込むような形状となっている点で、左右の高いサポートがカラダを包むことで、コーナリング時にカラダを支えることができ、サーキット走行やレース、峠道などで強い横Gが発生したときにカラダがGに負けて傾いてしまうことを防ぐことができる。

 そのバケットシートは大きくわけて2種類。それがセミバケットシートとフルバケットシートと呼ばれるものだ。

 セミバケットシートは、純正シートのようなリクライニング機構を備えていて普段使いしやすいのと同時に、下半身を支えるサポートと上半身を支えるサポートが大きくなっている点が特徴だ。

 もうひとつのフルバケットシートは一切のリクライニング機構を排除したモデルのこと。FRPやカーボンなどでベース(シェル)を作り、そこにスポンジやクッションを載せただけといった構造だ。そのなかにカラダを入れることで全身がサポートされて強いホールド感を得ることができる。

 フルバケットシート最大のメリットは、その剛性感の高さ。リクライニング機構をなくすことでシートの上部と下部の間にあった蝶番などのメカニズムを排すことができる。つまり、一体成型とすることで極めて高い剛性感を感じることができるのだ。この剛性感、じつはかなり重要で、サーキット走行では強い横Gがかかったときにわずかにシートがたわんでいるのが気になってくる。そうしたストレスを排除できるのだ。

 一方のセミバケットシートは、リクライニングするためにいちばんホールドしてほしいお尻の横部分に隙間が生まれてしまう。そこに隙間がないとリクライニングできないだけに、構造上致し方ないが、どうしてもホールド性とその剛性感ではフルバケットシートと比較して劣る部分があるのだ。

 フルバケットシートでは前述のとおり一体構造なので、このお尻の横部分も継ぎ目なくホールドされ、高い剛性感を感じることができるというわけだ。

 また、リクライニング機構がなくなるため、軽量に仕上げられるメリットもある。レースやタイムアタックとなると少しでもクルマを軽くしたい。そこでフルバケットシートは、重量の観点でも有利なのだ。

 よく「フルバケットシートは快適性の面で辛い……」という意見もあるが、それはフィッティング次第。きちんとしたポジションを構築できればむしろ疲れにくいともいえる。幅が狭めのフルバケットシートだとややお尻と太ももが圧迫されて疲れを感じることがあるかもしれないが、フルバケットシートだから腰痛が起きるということはない。

 逆にちゃんとしたポジションを出せば、その位置でしか座れなくなるので、むしろ腰痛は発生しにくいと筆者は分析する。

 国内最大手であるスポーツシートメーカーのBRIDEでは、フルバケットシート自体の大きさのバリエーションが広がり、女性や小柄な人向けの小さなサイズと、大柄な人向けのXLサイズのフルバケットシートもラインアップされている。そういったモノをそれぞれ店舗などで座ってみて、カラダに合ったものを選び、角度や左右位置などはプロショップで綿密にフィッティングしてもらうことがおすすめだ。

 DIYでの取り付けも可能だが、意外にその快適性に差がつくほか、最近ではシートエアバッグ用の着座センサーへの対応などが必要なケースが増えているので、シートの取り付けはプロのフィッティング術を活用するのがおすすめといえる。