IT大手セールスフォース創業者が提唱した「1-1-1モデル」 社会貢献を会社の核に

AI要約

IT大手セールスフォースの創業者マーク・ベニオフさんは、社会貢献に熱心であり、「1-1-1モデル」を提唱している。同社は地域のNPOにビルの最上階を開放し、資金集めの場として活用している。

ベニオフさんは製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を活用してコミュニティーに貢献するモデルを掲げ、社会貢献を企業文化の一環とし、従業員にも社会貢献への参加を促している。

セールスフォースはこれまでにNPOに約1054億円の助成金を支給し、5万9000団体に製品を提供している。また、従業員は合計890万時間のボランティア活動を行っており、社会貢献活動に積極的に取り組んでいる。

IT大手セールスフォース創業者が提唱した「1-1-1モデル」 社会貢献を会社の核に

米国サンフランシスコで創業したIT大手セールスフォースは、創業者マーク・ベニオフさんが社会貢献に熱心なことで知られる。「製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を活用してコミュニティーに貢献する」という「1-1-1モデル」を提唱し、他者にも呼びかけてきた。その理念や実践とは。(秋山訓子=朝日新聞編集委員)

米国西海岸の大都市、サンフランシスコに、ひときわ高くそびえ立つ61階建てのビルがある。ガラス張りの最上階からは街並みやサンフランシスコ湾、金門橋などが一望でき、最高の見晴らしだ。

この地で創業したIT企業大手セールスフォースの本社ビルだ。最上階は「オハナフロア」(オハナはハワイの言葉で「家族」)として地域のNPOなどに開放している。

「資金集めのイベントでよく利用されていて、これまでここを利用してさまざまなNPOが集めた資金の総額は1億800万ドル(約160億円)以上になる」と社会貢献担当シニアバイスプレジデントのベッキー・ファーガソンさんは語る。シカゴ、東京、ロンドン……。同社の世界9都市のオフィスの最上階はすべてこのような「オハナフロア」だ。

創業者のマーク・ベニオフさんは社会貢献に熱心なことで知られる。

1999年の創業時から「企業文化の中に社会の役に立つという信念を確実に根づかせたいと考えていた」(ベニオフさんの著書「トレイルブレイザー」)といい、「製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を活用してコミュニティーに貢献する」という「1-1-1モデル」を提唱する。

「(善き行いと成功を)両立させることが必要」「善いことを行っている企業に市場が報いることや、社会的使命を持った企業のほうが成功しやすいことを示す証拠はいくつもある。テクノロジーをはじめとした競争の熾烈(しれつ)な業界では、優秀な人材を獲得できるかどうかが損益の分かれ目になりうる」(同書)と語る。

実際、社会貢献は同社への入社理由の第2位で、従業員が同社に留まる理由でも3位に入るという。

「私たちは創業時から新しいテクノロジーモデル、ビジネスモデル、そして社会貢献モデルによってイノベーティブな新しい企業をめざしてきた」とファーガソンさん。これまでにNPOなどに助成した総額は約7.08億ドル(約1054億円)、製品を無償や割引で提供してきたNPOは5万9000団体、従業員がボランティアをした時間は890万時間に上る。2024年度(昨年2月からの1年間)の助成額は3600万ドル(約53億円)だ。