JR東日本「乗客が多い駅トップ100」新横浜だけなぜ減った

AI要約

新型コロナウイルス感染症の影響で乗車人員が減少したが、2023年度には回復傾向が見られる。長距離移動客の復活や地域の人気による駅の増加など、様々な要因が影響している。

特に新横浜駅で乗車人員が減少した背景には、新横浜線の開業が影響している可能性が示唆されている。他の駅では主に遊びや観光目的の乗客が増えていることが特徴的。

鉄道利用の変化や地域の魅力が明らかに伝わってくる記事であり、鉄道ファンや地域経済に関心がある人にとって興味深い内容と言える。

JR東日本「乗客が多い駅トップ100」新横浜だけなぜ減った

 JR東日本が7月19日、2023年度の各駅の乗車人員(1日平均)を発表した。上位100駅で見れば、新型コロナウイルス感染症の流行による落ち込みから回復が続き、多くの駅で22年度比0~10%増となっている。

 ここまでは大方の予想通りだろうが、中には特異な数値を見せた駅もあった。鉄道ライターの土屋武之さんが解説する。【毎日新聞経済プレミア】

 ◇長距離移動客の回復

 上位10駅の顔ぶれは22年度と全く同じで、1位は新宿、2位は池袋、3位は東京だ。このうち東京駅は22年度比で16.5%増と大きな回復を見せた。ただしコロナ禍前(19年度)の乗車人員が約46.2万人だったのに対し、23年度は約40.3万人だ。まだ完全復活には至っていない。

 他の上位駅を見ると、東海道新幹線が停車し、東京国際(羽田)空港へのアクセス駅でもある品川(6位)が10.3%増。同じく羽田空港へ向かう東京モノレールへの乗換駅、浜松町(16位)が12.2%増だ。こうした駅の増加率が大きいことから、長距離移動客が順当に戻ってきていることがうかがえる。上野(13位、10%増)も同様だ。

 特に東京や品川、上野は「定期券客」より「定期券外客」のほうが明確に増えてきており、この状況を裏付けている。

 ◇「遊びに出る人」が増えた

 このほかにも乗車人員が10%以上増加した駅は、秋葉原(9位、11.3%増)、舞浜(50位、19.2%増)、原宿(64位、12.6%増)、関内(86位、12.7%増)と、定期券外客のほうが多い駅が目立つ。

 いずれも長距離列車とは縁が薄い駅であることから、近場で遊びに行ったときの乗り降りが増えていると推測できる。

 例えば舞浜は定期券客が約2.7万人で、定期券外客が約4.8万人。6割以上が定期券外客だ。近隣には住宅地もある駅なので定期券客も比較的多いのだが、やはり東京ディズニーリゾートの人気の高さがよく表れた形だ。

 もっと顕著なのが原宿で、定期券外客は7割以上となった。原宿人気もすっかり戻ってきている。

 ◇新横浜駅はなぜ減った

 上位100駅のうち、特異なのが東海道新幹線の停車駅でもある新横浜だ。唯一、前年度比で7.5%減と減っている。新横浜駅周辺は横浜市の新都心に位置づけられ、企業などの通勤目的地が集まっているにもかかわらずだ。

 乗車人員は23年度が約4.7万人。19年度は約6.5万人なので、3割近くも落ち込んでいることになる。

 ただ、気をつけなければならないのは、この統計がJR東日本のものであり、JR横浜線だけの数値になっている点だ。

 今回、特異な数値となった大きな要因は、23年3月に東急新横浜線・相鉄新横浜線が開業したことに他ならない。それまでは東急の沿線から新横浜へ向かおうとすると、菊名や長津田などでJR横浜線に乗り換える必要があった。

 それが新横浜線の開業によって列車が直通し、運賃も安くなる同線へと利用客が流れたのは明白だ。東急が発表した東急新横浜駅の「乗降人員」は約7.1万人(1日平均、23年度)。このうち乗車人員は半数として約3.5万人といったところだろう。

 また、新横浜へは横浜市営地下鉄も乗り入れているが、横浜市公表の年間乗車人員(23年度)から「1日平均」を計算すると約3.5万人だ。19年度は約3.6万人であることから、新横浜線開業の影響はあまり見られない。

 つまりJR横浜線の「ひとり負け」という状況で、新横浜地区全体の鉄道利用に“異変”が起きているわけではなさそうだ。