高速道路空白地帯を往くVOL.1「練馬区には首都高がないんです!」【清水草一の道路ニュース】

AI要約

東京都区部の一般道の平均速度が低いことから高速道路の重要性が伝わる。

練馬区を例に、高速道路空白地帯でのクルマ移動の不便さが説明される。

練馬区の道路整備の遅れや宅地化の影響が高速道路のアクセス不便さにつながっている。

高速道路空白地帯を往くVOL.1「練馬区には首都高がないんです!」【清水草一の道路ニュース】

 クルマと道路は切っても切り離せないもの。交通ジャーナリストの清水草一が、毎回、道路についてわかりやすく解説する当コーナー。今回は、「高速道路空白地帯を往く」と題して、高速道路の恩恵に与れない地域について考察する。まず一回目は、練馬区における高速道路との関係や歴史についてひも解く。

文/清水草一、写真/フォッケウルフ、国土交通省、資料/国土交通省

 首都圏のドライバーにとって、高速道路は生命線だ。一般道はクルマだらけ、信号だらけで、平均速度が非常に低い。東京都区部の一般道の平均速度はわずか17km/h。首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)全体でも24km/hにとどまり、全国平均の35km/hに大きく劣っている(2015年国交省調べ)。

 一方、高速道路は渋滞していても、平均してその2倍くらいの速度で流れる。たとえば首都高の平均速度は42km/h(2022年警視庁調べ)。下道よりははるかに速い。高速ICまでの距離が遠い高速道路空白地帯は、鉄道駅のない町のように、クルマでの移動が不便になる。

 東京23区最大の高速道路空白地帯は、首都高4号線・5号線・C2(中央環状新宿線)、プラス北西の一部を外環道に囲まれた練馬区・中野区・杉並区に広がる一帯だ。その範囲は南北約12km、東西約10kmにおよんでいる。なかでも西武池袋線・西武新宿線沿線は、その中心部(=最も不便な地域)にある。

 私の実家は中野区北西部。まさにその地域にあった。最もアクセスのいいICは首都高の幡ヶ谷および初台で、そこまで渋滞の新青梅街道や環七を走り、1時間近くかかることもあった。関越道の練馬ICおよび外環道の大泉ICは、それよりは近かったが、北の方角に向かう場合を除けば遠回りすぎて、かえって時間がかかってしまう。

 私は高速道路空白地帯育ちのトラウマが強かったため、実家を離れてからは、首都高のICに近い場所に住むことにこだわった。ただ私の実感としては、中野区はまだマシ。もっと厳しいのは練馬区の西武池袋線沿線だ。

 なにしろ練馬区は、一般道の整備が23区内で最も遅れていた。江戸期からの街道筋から外れていた上、都市計画が実現しないまま宅地化が進むスプロール現象が激しく、高速道路どころか幹線道路が極端にまばらで、「練馬区内のクルマの移動は泥田を泳ぐようなもの」と言われていた。