2022年7月には台湾メディアで「目撃情報」も、悲しき「口裂け女の都市伝説」が海を渡るまで

AI要約

口裂け女という都市伝説が1970年代末の日本を混乱させた背景と、その怪奇な出会いについて報告される。

口裂け女が日本中を徘徊した理由として、追いやられたために居場所がなくなった可能性が浮上し、その影響を分析する。

口裂け女は目撃談が広まり、学校や警察にまで影響を与えるほどの社会現象となり、一時は集団下校や警察出動まで引き起こす事態に拡大した。

2022年7月には台湾メディアで「目撃情報」も、悲しき「口裂け女の都市伝説」が海を渡るまで

1970年代末の日本を混乱に陥れた都市伝説界のスターである妖怪・口裂け女。彼女が日本中を徘徊したのはなぜか。そして、どこへ行ってしまったのか。過去の報道を振り返りつつ分析する。

※本稿は『私のバカせまい史 公式資料集』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

■初の目撃談は1978年の岐阜県から伝えられた

 人気のない道を歩いていると、闇夜にマスクをした若い女の姿が浮かび上がる。女は「私、綺麗?」と話しかけてきた。

 突然のことにとまどいながら「き、綺麗だと思います」と返すと、女は「これでも綺麗?」と、やおらマスクを外した。

 するとその顔は、口が耳元まで裂けた恐ろしいものだった。驚いて走って逃げ出すと、女は猛スピードで追いかけてくる……。

 これが1970年代末の日本を大混乱させた口裂け女(図1)である。

 ※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

 1978年、岐阜県からはじまった口裂け女の目撃談は、『名古屋タイムズ』1979年1月22日付の記事「“口裂け女”が出たあ!!」を皮切りに、各マスコミがこぞって取り上げて瞬く間に伝播。警察や教育関係機関が注意喚起するほどの大混乱が生じた。

■集団下校がはじまり、警察までも出動する事態に

 新聞『名古屋タイムズ』に続き、雑誌『週刊朝日』1979年6月29日号「全国の小中学生を恐れさせる 『口裂け女』風説の奇々怪々」の記事など、さまざまなメディアに取り上げられた口裂け女。その影響力は凄まじく、学校では注意を喚起して集団下校を開始。誤報で警察が出動するほどの社会現象になった(図2)。

 時には誤認や思い込みも飛び出し、噂話に信憑性を与えた。岐阜県在住のYさんは約40年前、小学生のころに口裂け女を目撃したという。

 「女がトイレで手を洗っていた。鏡を見たときに口が裂けているのがわかった。ヤバい!  と思って、すぐトイレを飛び出した」とのこと。だが人々を恐怖に陥れた口裂け女の足取りを分析すると、じつは日本全国を駆け回った逃避行であったことが判明した。

 1978年12月の岐阜県ではじめて目撃されて以降、口裂け女は日本全国を転々とする。長距離にもかかわらず日本を縦断する理由は何だろうか。仮説として挙げられるのは、忌み嫌われたために追いやられて居場所がなくなったのではないかというものだ。