学生デモで首相が隣国に逃亡…脱中国でバングラデシュなどグローバルサウス進出目指す日本企業が注視すべきリスク

AI要約

バングラデシュで公務員採用の特別枠を巡る抗議活動が激化し、大規模な衝突と死亡事件が続いた。

ハシナ首相が辞任し、暫定政権が発足。ムハマド・ユヌス氏がトップに指名され、政治的混乱が続く見通し。

日本企業はバングラデシュ進出を進めつつあり、経済成長と労働市場の魅力が投資意欲を高めている。

学生デモで首相が隣国に逃亡…脱中国でバングラデシュなどグローバルサウス進出目指す日本企業が注視すべきリスク

南アジアのバングラデシュでは7月、公務員採用の特別枠をめぐって反発する学生たちによる大規模な抗議活動が広がり、治安部隊と衝突するなどして150人以上が死亡した。8月に入っても抗議デモは続き、4日には国内各地で衝突が相次ぎ、学生と警官隊の双方を合わせ90人以上が死亡した。

学生らのデモ隊にはハシナ政権に反発する野党支持者たちも紛れ込んでいるとされ、デモ隊は警察署や与党関連施設などを襲撃したり、バスを放火したり、高速道路を封鎖したりするなど破壊行為を繰り返し、警官隊は催涙ガスやゴム弾などで応戦し、学生を射殺したケースもあるという。

学生たちは当初、公務員採用の特別枠の撤廃をスローガンに掲げていたが、抗議デモが激しくなるにつれ、ハシナ首相や閣僚などの退陣を求める抗議デモへと変化し、ハシナ氏は8月5日に辞任に追い込まれ、隣国のインドに脱出した。

ハシナ氏は長年にわたってバングラデシュで実権を握ってきたが、辞任発表を受けて首都ダッカでは人々が歓喜し、首相公邸には多くの若者たちが押し寄せ、略奪や破壊行為が行われた。

今後、バングラデシュでは暫定政権が発足するとされ、そのトップにノーベル平和賞受賞者で経済学者のムハマド・ユヌス氏が指名されたというが、同国をめぐる政治的混乱はしばらく続くことが考えられよう。

一方、バングラデシュに進出する日本企業はインドや東南アジアほど多くはないものの、近年は増加傾向にあり、昨年3月にJETROが公表した企業統計によると、同国に進出する日本企業の7割以上が事業を拡大する意向を示している。バングラデシュは6%と高い経済成長率を示し、国民の平均年齢が約27歳と若者が非常に多い。今後も労働市場として外国企業の期待も高く、外国企業からの積極的な投資が行われていくだろう。

先端半導体をめぐる米中間の覇権競争、中国を念頭に置いた経済的威圧、米国の貿易保護主義化など、経済安全保障における日本企業の懸念事項は増える一方だが、特に脱中国依存とリスク分散化の観点から、バングラデシュなどグローバルサウスへの展開を強化する日本企業の動きが広がっている。筆者の周辺でも、経済合理性との観点から可能な限り脱中国に舵を切り、インドや東南アジア、アフリカなどにシフトする企業の動きが見られる。