「V8」との永久の別れ マセラティ・ギブリ 334ウルティマをモデナで堪能 フオリセリエの別格内装

AI要約

モデナの丘陵地帯を駆けるマセラティのギブリ 334ウルティマについて

最後のV8エンジンを搭載し、特別仕様として提供されたサルーン

運転は力強く、ラテン気質な個性を持つが、タイヤの温まりが課題

「V8」との永久の別れ マセラティ・ギブリ 334ウルティマをモデナで堪能 フオリセリエの別格内装

イタリア北部、モデナの丘陵地帯をうねるように伸びる、SP26号線。2速で立ち上がるヘアピンカーブが連続し、ランチア・フルビアやアルファ・ロメオ・スッドなら、最高に楽しいに違いない。

3.8L V8ツインターボを載せたマセラティには、少々窮屈かもしれない。全長は4971mmあり、車重は1969kgもある。

このギブリ 334ウルティマには、2023年の冬にアルプス山脈で試乗している。しかし、580psのサルーンを味わうのに理想的な条件ではなかった。初夏のモデナ州の方が、好適なことは間違いない。

マセラティは、このサルーンを最後にV8エンジンの量産を終える。基本的にはフェラーリのF154型ユニットの派生版で、ツインターボにクロスプレーン・クランク、ウェットサンプ、ショートストローク・ピストンを採用する。

ハイブリッド・ハイパーカー、SF90がミドシップするエンジンと兄弟関係にある。ボンネットを開けば、華々しい姿が顕になる。この節目の重要性へ注目したマセラティは、特別仕様の提供を決めた。

ベースはギブリ・トロフェオ。最高出力は同値だが、最高速度は334km/hと、8km/h上昇している。新しいピレリPゼロ・タイヤと、控え目なカーボンファイバー製スポイラー、アルミホイールを中心にした20kgの軽量化で叶えられた。

純粋な後輪駆動で、後輪操舵システムはない。運転支援システムの一部も、車重を理由に削られた。5000GT以来、同社にとって65年の歴史を締めくくる、V8エンジンを堪能できるように。

ブルー・ロイヤルに塗られたボディは、筋肉質なカーブを描き、彫刻作品のように美しい。フレームレスドアを開くと、格別のテラコッタ・レザーが迎えてくれる。

シフトパドルやアナログ時計が輝き、見事な調和を織りなす。シートへ身を委ね、ボンネット上のエアアウトレットを眺める。

アクセルペダルを軽く煽れば、パワーは不足ないとわかる。鋭く走る唯一の課題は、タイヤが温まるまで充分なトラクションを得ること。スタビリティ・コントロールがオンだと、処理が追いつかずもたつきがち。オフにすると、リアアクスルが暴れる。

ギブリは、相変わらずワイルド。ステアリングの反応は少し遅め。身のこなしは、BMW MやメルセデスAMGより穏やかなことは否定できない。

ヘアピンで気を抜くと、アンダーステア。だがアクセルペダルを踏みすぎると、不意をついたようにボディがスピンし始める。侵入時は、曲率を見極め、ラインを定め、荷重移動とトラクションを意識する必要がある。

タイヤが温まると、ラテン気質な個性がマイルドになり、受け入れやすくなる。どんなライバルより、スピードを求めたくなる。ドライバーを強く惹き込む。

すぐに自信を抱けるわけではない。スポーツ・モードで、スタビリティ・コントロールを中間にすると良い。フェラーリの知的なシステムを、利用できないのが残念だ。

日常生活との親和性は、高くはない。極めて高価だし、厳しい冬は扱いにくいだろう。それでも、市街地を流している限り静か。乗り心地も優しい。