令和のブラックマンデー到来、今後のマーケットは?戻り基調だが、二番底含めてボラの激しい展開続く。米利下げ開始による金融相場到来で上昇トレンドに

AI要約

8月5日、日経平均株価は史上最大の4451円安で暴落。原因は円キャリートレードの急速な巻き戻しによるもの。

個人投資家や大手企業も含めた800銘柄以上がストップ安となり、市場は混乱に陥った。

暴落後は8月6日に一時の反発があったものの、マーケットは依然不安定。金融相場への備えが必要。

●日経平均株価4451円安!  下げ幅は史上最大!  ブラックマンデーを超す! 

 8月5日の東京市場。日経平均株価は朝方から2000円を超える下げとなったものの、前場終了には1600円安まで戻してヤレヤレと思っていたら、後場からの取引は時間を追うごとに売りが加速して4451円安の3万1458円まで売られた。ブラックマンデー翌日の1987年10月20日に記録した3836円安(下落率14.9%)を超える史上最大の下げ幅となり、下落率も12.4%と史上2番目となった。まさに「令和のブラックマンデー」到来の歴史的な1日だった。

 ご存知のように日経平均は前週金曜日の8月2日に2216円安と急落しており、すでに投資家マインドは打ちひしがれている状況にあったが、8月5日の午後に起こった暴力的とも言える急落ぶりは世界的なニュースとして各国で取り上げられ、お茶の間でもトップニュースとなった。

●歴史的暴落に最も戦慄したのが新NISAで投資デビューした個人投資家

 日本経済新聞が「号外」を出すほどの社会的衝撃だった。私のように35年も株式市場にいる者にとっても驚くほどの暴落だったが、一番心理的に悪影響を受けたのが、今年から始まった新NISAで投資を始めたビギナーの個人投資家たちだと思う。含み益が一瞬で含み損に変わり、運用資産が急激に減っていく恐怖。想像を絶するものだったはずだ。

 そもそも、これだけの暴落の原因とは何だったのだろうか?  最近、下落した日の解説としてよく使われている「米国の景気後退懸念」では全く説明不能である。なぜなら、米国市場はそんなに下がっていないからだ。もし、米国が市場関係者たちが想像していなかったほどのハードランディングになるのなら米国市場も暴落の動きが出てもおかしくないが、そうはなっていない。日本の暴落のキッカケは実は為替市場にあった。円キャリートレードの巻き戻しだ。

●暴落の要因は円キャリートレードの急速な巻き戻し

 円キャリートレードとは、低金利の円で借り入れて高金利の金融商品で運用する手法だ。日本の短期金融市場で調達した円を外貨に換えて運用するため、円売り要因となる。投資対象はさまざまだが、エヌビディアを中心とした米ハイテク株も主流の一つになっていた。運用益に加えて金利の利ざやを獲得しようとする取引であるが、さらに円安進行で為替益も稼ぐことができた。要するにトリプルメリット・トレードである。もちろんレバレッジ取引であるため、思惑通りに取引ができれば莫大な利益を上げることができる。だが、8月5日に円キャリートレードが崩壊し、これまでの流れが一気に逆回転。円を買い戻して、株を売るという一方通行になった。これが暴落のキッカケである。

 急激な円高の引き金を引いたのが、7月31日の日銀金融政策決定会合の結果発表後に開かれた植田和男総裁の記者会見だ。政策金利をゼロ金利から0.25%への引き上げを決定したが、会見の席で「年内の追加利上げの可能性」を否定しなかったことでドルを売って円を買う動きが起こり、前日の154円台だった水準から151円台まで円高が進んだ。植田発言はやや先走った感は否めないものの、問題だったのが「繰り返し利上げをする」という誇張された英訳である。これが海外投資家にサプライズとして受け止められ、円キャリートレードの巻き戻しを誘発した。8月5日の日経平均は4451円安となったが、ドル円も141円台まで急騰。今年年初のレベルに戻ったことになる。要するに141円から161まで円安が進み、再び一気に141円への円高。すなわち、年初からの円下落は全戻しとなった。

●三井住友FG(8316)など大型株も含めてストップ安は800銘柄に上る

 ドイツ銀行のレポートでは、日本のGDP(国内総生産)の505%に相当する巨額のキャリートレードが存在するそうだ。金額にして約20兆ドル、約3000兆円というとてつもない大きなポジションである。今、半分の巻き戻しが終わったとの観測がなされている。もちろん、すべて巻き戻されることはないが、まだ大量のポジションが残っている状態である。

 4451円安となった8月5日は、ヘッジファンドが円キャリー巻き戻しで生じた巨額損失の埋め合わせに日経平均先物を売りまくり、相場の流れに追随するCTA(商品投資顧問)やグローバル・マクロファンドもそれに乗っかって売り浴びせ、信用取引を行っている個人投資家は追い証祭り&ロスカット祭りで株をぶん投げ、恐怖を感じた新NISA投資家も損失回避のために持ち株の売却に走った。ストップ安が実に800銘柄。三井住友FG(8316)を筆頭に時価総額が5000億円以上の大型株すらストップ安続出で「売ろうにも売れない」状態が起こった。ストップ安でも売らなければならない人たちが大勢いたため、売りが止まらなくなった。

●8月6日の大幅高以降戻り基調だが、油断禁物。当面ボラが激しい展開続く

 私がダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチとのコラボレーションで投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」の会員には「マーケットはシステマティックリスクにより大荒れの状況が続いているが冷静に対処していただきたい」「今の局面は売らざるを得ない投資家の売り、恐怖でおののく投資家たちの投げ売り、そして投機筋による売り仕掛けの加速となっている」とのコメントを暴落の最中に出し続けた。

 翌日の8月6日は一転して日経平均は3217円高となりひとまず大幅反発。そして8月7日には日銀の内田眞一

副総裁が「不安定な状況で利上げすることはない」と明言して、更に戻りを試すマーケット展開となった。 とは言うものの、いったん大きな暴落を浴びてしまうとマーケットは乱高下する。「売らないといけない投資家たちの投げ売り」と「急落で買いを入れる投資家たち」との綱引きだ。日経平均の日中値幅が毎日1000円以上になるはそのせいだ。暴落後に反発した後、再び二番底を探るという相場の経験則がある。まだ安心できないが、二番底が終われば(3万円前後か? )、また上昇トレンドがやって来る。

●利下げ開始で始まる金融相場への備えが万端の「勝者のポートフォリオ」

 そもそも今は逆業績相場の最中だ。先週のコラムで述べたように「ガタガタする」のだ。だが、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始で金融相場が始まる。それに備えて準備をしておくべき時なのだ。「勝者のポートフォリオ」では十分な備えをおこなっており準備万端である。皆さんはいかがだろうか? 

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行う「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。8月8日(木)20時より第32回Webセミナーを開催。テーマは『令和のブラックマンデー到来、今後のマーケットと投資戦略を考える』。平日夜にもかかわらず313名が参加し、Q&Aを含めた終了時刻は22:40。すでに会員ページのアーカイブにて動画がアップ済みだ。次回は9/5(木)20時より開催予定である。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。

 スペシャル講義では『ポートフォリオ理論』に続き、太田流『ポートフォリオ実践』がスタートした。資産運用においてポートフォリオ運用のノウハウを知っておくことは必須であり、個人投資家にそれを身に付けてもらうことが目的である。また、太田流『新NISA活用法』もすでに完結した。700名の会員たちはすでにバッチリ新NISAに取り組んでおり大きな成果を出している。資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。

 ●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。