「京急本線」はあっても「京王本線」はありません! 「〇〇本線」がある会社とない会社

AI要約

鉄道路線の中核となる「本線」について、国鉄や私鉄の事例を挙げながら解説。

大手私鉄の中で「本線」を名乗る会社や、そうでない会社の違いを指摘。

各私鉄の事情に応じて、「本線」の名称が使われる背景と変遷について分析。

「京急本線」はあっても「京王本線」はありません! 「〇〇本線」がある会社とない会社

 鉄道路線のうち、中核となる路線は、「本線」と呼ばれることが多くなっています。国鉄→JRの場合、東海道本線や東北本線など、エリアごとの中核路線が「本線」を名乗っており、2024年現在は27路線が存在しています。

 私鉄でも、複数の路線を持つ事業者の場合、「本線」と名付ける会社は多く見られます。一方で、中には「本線」を持たない会社も存在しています。

 大手私鉄で「本線」(あるいは類似した名称の路線)を持つのは、東武、京成、京急、相鉄、名鉄、南海、京阪、阪神、阪急の9社。このうち、単純に「本線」という路線名としているのは、京成、京急、阪神のみ。東武は東上本線、名鉄は名古屋本線、阪急は京都本線、宝塚本線、神戸本線で、その他の3社は「社名+本線」としています。

 一方、大手私鉄で「本線」が存在しないのは、西武、京王、小田急、東急、東京メトロ、近鉄、西鉄の6社。「本線」という概念を当てはめにくい地下鉄事業者の東京メトロを除けば、京王は(狭義の)京王線、小田急は小田原線、西鉄は天神大牟田線が「本線」に相当する路線です。一方、西武、東急、近鉄の場合は、少し事情が異なります。

 たとえば西武の場合、路線網の核となる路線は、池袋線と新宿線の2路線です。東急は、東横線、田園都市線、目黒線の3線でしょうか。近鉄は、大阪線、奈良線、京都線、名古屋線、南大阪線と、核となる路線がさらに多く存在します。各社とも、「本線」に相当する路線が複数あるため、あるいは元々は別々の事業者が建設した路線なので優劣をつけることを避けたため、「本線」を使用していないと考えられます。

 一方、先に挙げた阪急の場合は、核となる3路線がいずれも「本線」を名乗っています。たとえば京都本線の場合、同線のほか、千里線、嵐山線の2つの支線をまとめて「京都線」と呼ぶことがあるため、その中核路線である路線を「本線」としているようです。とはいえ、この事情は西武や近鉄も同じ。要は会社の考え方の違いなのでしょうか。

 また、東武では単独の路線名で「本線」を使用しているのは東上本線のみですが、東武スカイツリーライン、伊勢崎線、日光線、野田線など、東側にある各路線をまとめて「本線(系統)」と呼ぶこともあります。この場合、東上本線と越生線はまとめて「東上線」と呼ばれています。

 さらに、東急の前身会社が記した「東京横浜電鉄沿革史」によれば、東急東横線も、1943年ごろには「東横本線」と呼ばれていたことがあるようです。

 余談ですが、大阪線や名古屋線が「本線」を名乗らない近鉄でも、田原“本線”という「本線」がつく路線が存在します。ただし、この路線名の読みは「たわらほんせん」ではなく「たわらもとせん」。地名の田原本(たわらもと)から採られた路線名です。