「マタギのような脚力で尾根から尾根へと移動」「熊やスズメバチにも怯まない」カリスマハンターが命懸けで追う、“幻の虫”の正体

AI要約

虫採りに命を賭ける男たちの物語。INFINITY∞BLACKというカリスマたちの集団が、真の天然オオクワガタを求めて山奥に挑む。

虫好きなオッサンたちが、虫を採ることが目的ではないと言いながらも、熱い情熱でオオクワガタを探し続ける。

昭和の時代に“黒いダイヤモンド”と呼ばれたオオクワガタの世界に迫る。

「マタギのような脚力で尾根から尾根へと移動」「熊やスズメバチにも怯まない」カリスマハンターが命懸けで追う、“幻の虫”の正体

たかが虫採りというなかれ。“幻の虫”の採集に命を賭ける男たちがいる。なぜそれほどまでに虫に魅入られ、危険を冒してまで山に入るのか――。

今夏の猛烈な暑さも霞むような“熱き”ハンターたちの冒険を、『オオクワガタに人生を懸けた男たち』より一部抜粋・編集のうえお届けする。

■カリスマたちの集団名は「INFINITY∞BLACK」

 とんでもない凄腕のクワガタ・ハンターたちがいるらしい――。そんな噂が耳に入ってきた。

 マタギのような脚力で尾根から尾根へと移動し、人も通わぬ山奥に入っていく。人間離れした嗅覚をもち、真夜中でもスルスルと木に登る。熊どころか心霊現象にも怯まない。

 ときにはヒマラヤのハニー・ハンターばりに、数十メートルの崖の上にも挑む。滑落して肋骨を折っても、妻に怒られるのが怖くて黙っていたという。

 都市伝説みたいな話だが、この男たちは実在する。そして驚いたことに、彼らは苦労の末に見つけた“獲物”を、「採ることが目的ではない」と言うのだ。虫を売ってお金に変える気はさらさらない。

 カリスマリーダーが束ねる集団名は「INFINITY∞BLACK(インフィニティーブラック)」。仲間内には掟が存在し、裏切った者は破門となる。なんだか物々しい連中を想像してしまうが、素顔は虫好きなオッサンたちの集まりだ。ただ、彼らは常人には見ることのできない景色を知っている。

 メンバーが探し求めるものはただ一つ。昭和の少年が憧れ続けた日本昆虫界のトップスター、オオクワガタだ。

【写真】「カッコよすぎ…!」“カリスマハンター”たちが命懸けで採集する「幻の虫」(10枚)

 「え?  それってホームセンターに2000円で売っている虫でしょ?」と言うのはやめてくれ。確かに今では飼育で増えて、“王様”も安価になってしまった。

 だがここで取り上げるのは、真の天然オオクワガタのことである。昭和の時代、それは“黒いダイヤモンド”と呼ばれ、庶民には手の届かない存在だった。都会では虫好きな少年たちが、高級デパートの伊勢丹に置かれたケースを張り付くように見つめていたという。

 当時の値段でも、小さなものが数万円、大きなものは10万円を超えるのが相場だった。筆者のような地方住まいの者には、王様の顔を拝むことさえできなかったのである。