大幅刷新を受けたBMWのヘリテージモデル「R 12 nineT」はどんな世界を構築しているのか?

AI要約

BMW Motorradはネオクラシックモデルに注力し、2014年にR nineTを送り出し、続々とバリエーションモデルを販売している。

最新作のR 12 nineTは、先代から大幅にフレームが刷新された新型で、パワーユニットは先代と同様のDOHC空油冷ボクサーエンジンを搭載。

価格は253万5000円からで、他モデルと比較すると高価だが、BMW独自の技術が備わり、ファンにとって魅力的なモデルとなっている。

大幅刷新を受けたBMWのヘリテージモデル「R 12 nineT」はどんな世界を構築しているのか?

 近年の2輪の世界で、ネオクラシックモデルに注力しているメーカーと言ったら、私(筆者:中村友彦)が筆頭に挙げたいのはBMW Motorradです。もっとも、そんなことを書くとトライアンフやロイヤルエンフィールド、モトグッツィ、カワサキなどの関係者やマニアから、苦情が来そうな気がしますが……。

 このカテゴリーへの参入が他メーカーより遅かったにも関わらず、現在のBMWは数多くのネオクラシックモデルをラインナップに揃えているのです。何と言っても、2014年にヘリテージシリーズの第1弾となる「R nineT(アール・ナインティ)」を世に送り出した同社は、以後は矢継ぎ早にバリエーションモデルの「ピュア」や「レーサー」、「スクランブラー」、「アーバンG/S」を生み出し、さらには1930年代の「R 5」をモチーフとするクルーザーとして、2020年以降は同社のボクサーエンジン(水平対向2気筒エンジン)史上最大排気量を搭載する「R 18」シリーズを販売しているのですから。

 いずれにしても、古き良き時代の雰囲気を再現し、気軽にドレスアップ系のカスタムが楽しめるヘリテージシリーズは、従来のBMWユーザーとは異なる新しいファンの獲得に大いに貢献し、現在の同社にとっては重要なカテゴリーになっています。

 そんなヘリテージシリーズの最新作が、2024年から販売が始まった兄弟車、現代的なロードスポーツの「R 12 nineT」と、そのクルーザー仕様と言うべき「R 12」です。

 以下では既存の「R nineT」の路線を継承した、「R 12 nineT」の素性に迫ってみたいと思います。

 先代(R nineT)と新作(R 12 nineT)の差異を語るうえで最も重要な要素は、独創的な前後分割式から、オーソドックスなメイン部+シートレールという構造に刷新されたフレームでしょう。

 もちろんその他にも、インナーチューブ径を46mmから45mmに縮小したフロントフォークや、直立から前傾配置となったリアショック、意匠を改めた外装、日本仕様で標準装備となったクイックシフターなど、先代と新作の相違点は数多く存在するのですが、手間とコストがかかる骨格を刷新したという事実からは、BMWのこのシリーズにかける意気込みが伝わってきます。

 一方のパワーユニットは基本的に先代からの転用で、最高出力・最大トルクに大差はありません(先代は109ps/7250rpm・116Nm/6000rpmで、新作は109ps/7000rpm・115Nm/6500rpm)。

 もっとも、両車が搭載するDOHC空油冷ボクサーエンジンは、元を正せば2008年型「HP2スポルト」用で(後に「R 1200」シリーズにも転用)、当時と比べれば現在の排出ガス規制はかなり厳しくなっています。そういった事情を考えると、吸排気系やECUの刷新で実現した空油冷ボクサーエンジンの現役続行は、賞賛に値すると言っていいでしょう。

 そんな「R 12 nineT」の販売価格は、先代の「R nineT」+14万5000円となる253万5000円からです。

 BMWならではの最新技術が満載のネイキッド、空水冷ボクサーエンジンの「R 1250 R」は177万5000円から、水冷並列4気筒の「S 1000 R」は198万7000円からなので、素性を考えると決して安いとは言えないのですが、このモデルに関心を抱いているライダーの中で、他機種との装備の違いや価格差を気にする人は、そんなに多くはない……ような気がします。