“親ガチャ”に負けない! 虐待相談20万件超、養護施設出身者「運転免許取得支援」の実態をご存じか
近年、虐待相談件数が増加していることと、養護施設出身者の運転免許取得支援の重要性が示されている。
現状では施設を退所した若者や支援を受けづらい若者への支援が不足しているとの課題が浮き彫りになっている。
運転免許取得支援の現状と取得率、支援金額、労働との関連性についてのデータが明らかにされている。
近年、児童相談所への虐待相談件数が年間約20万件(子ども家庭庁、令和4年速報値)と過去最高を記録し、「社会として虐待を許さない」という意識が高まっている。
養護施設には、虐待のほかに
・親との死別
・複雑な家庭事情
で入所している若者もおり、施設は彼らが円滑に社会生活を送れるよう支援している。
今回は、若者がスムーズな社会生活を送るための手段として「運転免許の取得」に力を入れ、里親制度への政策提言も行っている認定NPO法人ブリッジフォースマイル(東京都港区)を取材した。
親を頼れない若者の運転免許取得の最前線を探る。
ブリッジフォースマイルの支援担当者は次のように説明する。
「当法人では、国や社会福祉協議会の制度、民間の支援を活用して、養護施設出身者の運転免許取得を支援しています。例えば、横浜市も支援を行っていますし、全国的には社会福祉協議会が『社会人一年生スタート応援助成』を実施しています」
「しかし、養護施設を退所した後の支援体制は十分ではなく、担当者の努力に頼っているのが現状です。精神面や生活面で支援が必要な若者がいるにもかかわらず、彼らのSOSが届かないことが多いのです」
「相談や支援を試みても、『やっぱりイイです』と断られ、支援が受けられないケースもあります」
つまり、運転免許取得の支援体制は整いつつあるものの、
・施設を退所した子どもや若者
・助けを求められない子どもや若者
への支援は依然として不足している。
全国社会福祉協議会では、児童養護施設出身者が高校を卒業して就職した場合に、ひとりあたり18万円を支給しており、ブリッジフォースマイルの担当者によれば、国からも数万円の支援があるという。これにより、合計で約20万円の支援と民間団体からの援助が利用可能となっているのだ。
では、児童養護施設出身者の運転免許取得の実態を、数値面からも考えてみよう。取得率は
「21.2%」(n=2597、2023年ブリッジフォースマイル調べ)
である(18歳での退所が前提)。
なお、16~19歳の年齢人口(約442万人)の運転免許取得率は
「18.4%」(内閣府、令和4年版交通安全白書)
である。前者がやや高くなっている。
この数字をもう少し後を追ってみると、20~24歳の運転免許取得率は「74.4%」で、20代後半では80%を超えている。
同法人の調査では、高校を卒業した養護施設退所者の半数が離職しており、運転免許取得までに精神面や生活面の基盤が万全とはいい難い。
また、公費による運転免許取得支援に対して、
「自力で働いて免許を取得した方がよい」
という意見も想定される。