「国立公園に高級ホテル誘致」の岸田首相を売国奴呼ばわり、日本人の“スタジオジブリ”みたいな自然観

AI要約

岸田首相が国立公園に高級ホテルを誘致する方針に批判が寄せられている。

実際には既に国立公園内に多くの宿泊施設が存在し、観光客も利用している。

高級ホテルの誘致は環境保護と観光振興の双方にメリットがある。

「国立公園に高級ホテル誘致」の岸田首相を売国奴呼ばわり、日本人の“スタジオジブリ”みたいな自然観

● 五輪選手もビックリ 岸田首相への罵詈雑言

 「あまりに短絡的だ!もはや開発じゃなく環境保護の時代だろ」

 「日本の美しい自然を外資に売り渡すなんて、この売国奴!」

 7月19日に開かれた「観光立国推進閣僚会議」で、全国35カ所の国立公園すべてに高級ホテルを誘致することを表明した岸田文雄首相がボロカスに叩かれている。

 ここまで批判が盛り上がった背景には、自然保護活動に取り組んでいる「公益財団法人日本自然保護協会」が、「自然環境保全上の問題が多い」と意見書を出したことも大きい。

 これを受けてネットやSNSでは、オリンピック代表選手への誹謗中傷さながら、岸田首相への罵詈雑言が飛び交い、政権批判が溢れ返ったというワケだ。

 ただ、今回ばかりはさすがに気の毒だ。この方針は安倍政権時の16年、「明日の日本を支える観光ビジョン(2016年3月)」の柱のひとつに国立公園が位置づけられたことから動き出した「国立公園満喫プロジェクト」によって専門家らの議論や検討が進められてきたものであり、岸田首相が思いつきでぶちまけたわけでもない。

 しかも、現在の国立公園を取り巻く環境や課題を踏まえれば、「高級ホテルを誘致する」というのはそれほど悪い施策ではない。ネイチャーツーリズムの観点からも、環境保護の観点からみても双方にメリットのある解決策だ。

 そもそも「国立公園に高級ホテルを誘致」することに反対している人たちの主張を見ていると、「国立公園」をスタジオジブリのアニメに登場するような「手つかずの自然があふれる保護エリア」のようなイメージを抱いている人が多いが、これは大きな誤解である。

 「特別保護地区」として開発が厳しく規制されているところもあるが、その広大なエリア内には人も住んでいるし、民間が一緒になって国立公園を盛り上げようという開発エリアがかなりある。それがよくわかるのが、国立公園内の延べ宿泊者数(日本人及び外国人)である。環境省の推計によれば、2023年度は3271万人だ。

 では、これだけすさまじい数の観光客が一体どこに泊まったのか。大自然の中で野宿という観光客もいるが、そのほとんどはホテルや旅館である。

● 岸田首相が売国奴なら 有名観光地はほとんど売国奴

 環境省の「宿舎事業を中心とした国立公園利用拠点の面的魅力向上に関する現状と課題」(23年1月30日)によれば、国立公園内の宿泊事業者は約1400だという。

 つまり、「自然豊かな国立公園に高級リゾートホテルを開発するなんて許せない!」と怒っている方たちには大変申し上げづらいのだが、すでに日本の国立公園には膨大な数の宿泊施設が溢れかえっており、国内外の観光客もバンバン利用をしている。関東の方ならば、日光や箱根などを旅行するするだろうが、あの辺りもすべて国立公園であり当然、高級ホテルも誘致されている。今回のことで岸田首相が売国奴ならば、日本国内の有名観光地はほとんど売国奴になってしまうのだ。

 そう聞くと、「既に宿泊施設がそんなにあるのだから、わざわざ高級ホテルなど誘致しなくていいじゃないか!」という意見が飛んできそうだが、実はそれがもうひとつの大きな誤解だ。