日伊共同「戦闘機開発」見直し報道、英労働党政権 日本にとって全然“対岸の火事”じゃないワケ

AI要約

英国の総選挙で労働党が勝利し、新政権が発足した。国防方針の見直しや共同開発プログラムの見直しの話題が浮上している。

現行の国防方針に対する批判や財政事情が新政権の方針見直しに影響を与えている。

英国の財政不振、欧州連合離脱、国防予算の課題などが新政権の政策決定に影響している。

日伊共同「戦闘機開発」見直し報道、英労働党政権 日本にとって全然“対岸の火事”じゃないワケ

 2024年7月5日、前日に行われた英国の総選挙の結果を受け、労働党が政権の座に就いた。これまで長く続いていた保守党政権から労働党政権への政権交代が行われた。

 新政権では

「国防方針の見直し」

が提起され、2025年にその結果が出される見通しとなっている。そのなかで、英国のメディアやアナリストが指摘しているのが、日本やイタリアとの戦闘機共同開発プロジェクト(グローバル戦闘航空プログラム。略称GCAP)の見直し論だ。

 なぜ、政権交代から間もないこの時期に共同開発プログラムの見直し論の報道がなされたのであろうか。ここでは英国を取り巻く財政と安全保障環境から読み解いていく。

 2024年7月に発足したスターマー新政権では国防方針の見直しが提起されている。新政権はそれまでの保守党政権で行われていた国防方針を引き継がずに新たな方針を立てるとしている。

 元々現行の計画は2021年に発表されたものであった。この方針では、

「陸軍を削減」

し、浮いた予算を海軍、空軍、そして新たな分野に投入するとしていた。しかし、この方針は、ロシアによるウクライナ侵攻前に立てられたものであり、計画見直しを主張する声が上がっていた。

 新政権発足後、国防方針の見直しが提起されたのは、政権交代による前政権の方針見直しもあるが、国防方針を巡るこのような経緯も影響している。見直し後の国防方針の発表は2025年の予定である。現時点ではどのような計画が発表されるかはわからない。GCAPについても、どうなるかはわからないのが実情である。

 では、なぜGCAP撤退が提起されたのだろうか。その理由としては、英国の厳しい財政事情が影響している。

 労働党新政権が打ち出した国防方針見直しは、これまでの国防方針への批判も含まれている。労働党は、総選挙以前から現行の国防方針を批判し続けてきた。現行の国防方針により、

「軍の空洞化を招いている」

というのが、労働党の主張だ。

 労働党政権が発足する以前から、英国は国防の見直しを行っている。2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、英国はウクライナに対する主要な支援国となっている。2024年4月24日に英国の庶民院で行ったシャップス国防大臣の報告によると、2022年から125億ポンドの支援を行っている。日本円に換算すると

「2.4兆円」

にも上っている。ちなみに英国の国防予算は2023会計年度で542億ポンドである。

 2021年に打ち出された国防方針は英国軍の弱体化をもたらしていると、労働党は批判している。予算の不足により、調達プログラムに支障が出ている。

 一方、英国の欧州連合(EU)離脱、コロナ禍は英国に経済不振をもたらした。保守党政権下のジョンソン政権は国防費を国内総生産(GDP)比2.5%、トラス政権は3.0%に増額すると表明した。

 GDP比3.0%とは大体1000億ポンド(19兆6000億円)にも達する。英国も他の欧州諸国同様に予算拡大を行おうとしているが、国家財政にそのような余裕はない。結局、優先順位を決め、予算の再配分を行うしかなかったのである。