中国自動車市場で「ディーラーの流通在庫」が急増、政府の買い替え奨励キャンペーンも効果は見えず

AI要約

中国の自動車市場でディーラーの在庫問題が深刻化しており、経営に重荷を抱えている状況が続いている。

2024年6月の自動車ディーラー在庫警告指数が前月比4.1ポイント上昇し、春節以外で最高値を記録。在庫過剰が続いている。

販売業者が増やした在庫に対し売れ行きが伸びず、販売目標の達成が難しい状況。結果、多くのディーラーが赤字状態に陥っている。

中国自動車市場で「ディーラーの流通在庫」が急増、政府の買い替え奨励キャンペーンも効果は見えず

 中国の自動車市場でディーラーが抱える流通在庫が膨らみ、販売業者の経営の重荷になっている。

 販売業者の団体である中国汽車流通協会が発表した2024年6月の「自動車ディーラー在庫警告指数」は62.3%と、前月より4.1ポイント上昇。1年前との比較では8.3ポイント高く、春節(中国の旧正月)の季節要因を受けた2月を除いて2024年の最高値を記録した。

 (訳注:中国では春節を新車で迎えたいと望む消費者が多く、ディーラーは通常より在庫を積み増して対応する)

■年初から在庫過剰が持続

 在庫警告指数は、販売業者の在庫金額を手元資金で割った数字をベースに、市場の需給状況なども加味して総合的に算出される。50%以下なら在庫水準は適正(またはメーカーの供給不足)であり、50%以上なら在庫過剰であることを意味する。

 2024年に入って以来、同指数は毎月50%を上回って推移してきた。中国汽車流通協会の分析によれば、6月の指数が一段と上昇した背景には、中国の地方が農繁期に入ったことや、例年にない高気温、中国南部の大雨などの要素が、販売店の集客やセールスに影響したことがあるという。

 販売業者側にも誤算があった。中国政府が推進する買い替え奨励キャンペーン「以旧換新」や、中国のEC(電子商取引)業界が毎年6月に開催する大型セールの効果に期待し、ふだんより在庫を増やしていたのだ。ところが、フタを開けてみると売れ行きは振るわず、経営状況の悪化を招いた。

 中国の自動車業界では、自動車メーカーと販売業者の間で年間および四半期ごとの販売目標を取り決め、その達成度合いに応じてメーカーがインセンティブ(販売奨励金)を支払うのが慣例になっている。

 しかし中国汽車流通協会の調査によれば、2024年上半期(1~6月)の販売目標を達成した販売業者は全体の2割弱にとどまった。その一方、目標達成率が50%に届かなかった業者が13.5%と1割を超えた。

 このことは、8割強のディーラーが上半期のインセンティブを十分に得られなかったか、またはインセンティブがゼロだったことを意味する。

■4割を超えるディーラーが赤字

 中国汽車流通協会が2024年3月に発表したレポートによれば、2023年の事業損益が黒字だった販売業者は全体の37.6%、収支トントンも18.8%にとどまり、残る43.5%が赤字だった。2024年の上半期に、赤字ディーラーの比率がさらに増えたことは想像に難くない。