川重裏金接待問題、防衛産業の成長期待に冷や水 問われる自覚とモラル

AI要約

川崎重工業と三菱重工業は防衛産業の中核企業であり、裏金問題により信頼が揺らぎつつある。防衛予算増加により受注が拡大しているが、裏金問題が先行きに影響を与える可能性がある。

防衛産業の利益率が改善し、受注額が急増している状況下での裏金問題の余波による懸念が高まっている。

自衛隊と企業の不適切な関係は防衛産業の成長期待を冷や水で浴びせ、従事者には法令順守やモラルが求められている。

川崎重工業が裏金を捻出し、海上自衛隊の潜水艦乗員に金品を提供していた問題で、防衛省による調査「特別防衛監察」の対象となった同社と三菱重工業は、潜水艦の建造以外にもさまざまな装備品を手掛ける防衛産業の中核企業だ。国の防衛予算の増額に伴い両社が受注拡大を見込む中、監察や川重の社内調査で裏金問題の余波が広がれば、防衛産業の先行きに影響する恐れもある。

■予算増で利益率大幅改善

両社の令和5年度の防衛事業の受注額は、川重が前年度比倍増の5530億円、三菱重工が3・3倍の約1・8兆円(宇宙事業含む)と急増している。

従来、防衛産業は利幅が薄く撤退する企業も相次いでいた。だが、国が5年度から5年間の防衛力整備計画の事業費を以前の計画の2倍以上の約43兆円とし、防衛装備の企業側の利益率を7%前後から、コスト変動分の調整を含めて最高15%まで引き上げる方針を示したことでビジネス環境は大きく改善した。

これを受けて、川重は5%未満だった利益率を9年度をめどに10%以上、5年度に2885億円だった売上高を12年度に5千~7千億円にそれぞれ引き上げる目標を策定。三菱重工も、5千億円規模で推移していた売上高を8年度をめどに1兆円規模に倍増する見通しを掲げ、約3割の増員などの体制強化を目指している。

■疑念は産業成長の妨げに

裏金問題で浮かび上がった自衛隊と企業の不適切な関係は、こうした防衛産業の成長期待に冷や水を浴びせた形で、改めて事業の従事者には法令順守に加え、国の安全保障に携わる自覚とモラルが問われている。

特に川重は、平成25年に陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプターの受注過程で自衛官が漏らした情報を利用した不適切行為で、防衛省から2カ月間の指名停止処分を受けており、不祥事の再発を防げなかった内部管理に重い課題を抱えた。

防衛装備品の利益率の引き上げには多額の予算が使われる。指名停止となった場合でも影響は一時的なものにとどまるとみられるが、適正な取引関係への疑念を払拭できず利益率引き上げへの批判を招けば、防衛産業の成長はおぼつかなくなる。(池田昇)