「先輩の机からはみ出した書類の山が許せない。こんな会社辞めたい!」退職希望の女性の心の奥に隠れた本当の気持ちとは?
AIやChatGPTの技術が向上する中、日本マインドワーク協会代表理事の濱田恭子氏は、相手の真意やニーズを引き出す力が重要だと指摘している。
人の感情には第一感情と第二感情があり、第一感情が認めにくいため、第二感情で覆い隠されることがある。
具体的な事例を通じて感情の分解がストレス解消に効果的であり、自分の本当の気持ちに気づくことが重要である。
AIやChatGPTの技術がどんどん向上している現在。これからの時代、AIに負けない人材になるために必要なのは「相手が伝えたいことを読み取る力」であり、「相手の真意やニーズを引き出す力」であると、日本マインドワーク協会代表理事で、メンタルトレーナーの濱田恭子氏は言います。そこで今回は同氏の新刊『仕事がうまくいく人は「人と会う前」に何を考えているのか』(青春出版社刊)から、心の奥の「本当の気持ち」を読み取るコツについて、抜粋して紹介します。
● 「隠れた感情」に 気づく
人の感情には「第一感情」と「第二感情」があります。物事が起きたとき、最初に生まれるのが第一感情で、次に生まれるのが第二感情です。
これだけなら話は単純なのですが、人間というものは、なぜか第一感情を認めるのが難しいものなのです。
第一感情を言い換えれば、心の奥深くにある「本当の気持ち」。だからそれを認めたくなくて、第二感情で覆い隠してしまうのです。
最初に意識するのは第二感情のほう。本人でさえ、第一感情である本当の気持ちに気づかなかったりします。
たとえば、小学生の男の子が、好きな女の子に話しかけられると照れて怒ったりしますよね。本当は好きなのに(笑)。この場合、第一感情が「好き」「恥ずかしい」です。でもそれを認めたくなくて、第二感情として「怒って」みたりするのです。
● 隣のデスクからモノがはみ出してくるのが 会社を辞めたいほどのストレスだった理由(1)
実際にあったビジネスのご相談で説明しましょう。感情を分解することによってストレスが解消された典型的なケースです。
ご相談に来たのは営業補助をされている30代の女性です。営業担当にとっては、なくてはならない有能なお仕事をされていました。女性の隣の席は、仕事をフォローしている営業の男性の先輩の机があります。先輩は外回りをしていて、日中はほとんど会社にはいません。
まじめな彼女の机の上はいつもきれいに資料が整理されていました。そんな彼女が突然、「仕事を辞めて、もっと自分に向いていることを探したい」と相談に来たのです。
理由を聞くと、隣の机の先輩が許せないとのこと。先輩は営業に出て、帰ってくると山のようにファイルや資料を積み上げていく。その書類の山が、彼女の机にはみ出てきて、一日に何回もそれを押し戻していてストレスがたまる。意思疎通もできない。だから、もうこんな会社辞めたいと言います。
「ちょっと待って。辞める前にちょっと感情の分解をしましょうか」と私は提案しました。
先輩の机の上の書類が雪崩のようにはみ出してくるたびに感じていたのは、「怒り」「ストレス」「失望」でした。これが表面上に出てくる第二感情です。
さらに分解していくと、第一感情として出てきたのは、「無価値観」「悲しさ」「みじめさ」でした。
「会社は男性のほうが多いし、多分女性を大事にしていない気がする」
「営業アシスタントの仕事をバカにされている気がする」
「先輩は私の仕事を認めてくれていない」
話をしていくうちに、こんな第一感情が隠れていたことに気がついたのです。