【ロードスター復活計画その7】新車から28年、真っ二つに割れたステアリングラックブーツを交換

AI要約

9年間停止していたNA8Cロードスターの復活計画が続く中、ステアリングラック周りのリフレッシュ作業が行われる。

タイロッドエンドやボールジョイントのブーツ交換手順が詳細に紹介され、作業のポイントが述べられている。

DIY歴の長い筆者も驚く程の新しい作業手法やテクニックを取り入れながら作業を進めている様子が描かれている。

【ロードスター復活計画その7】新車から28年、真っ二つに割れたステアリングラックブーツを交換

 長らく間が空いてしまったが、9年不動(記事執筆時点ではすでに10年だが)のNA8Cロードスター復活計画はまだまだ続く。

 前回まででタイミングベルト交換に、エンジンまわりのリフレッシュ、補機類の交換などを行って、ついにエンジン再始動まではこぎ着けた。

 ただし、寄る年波はエンジン以外にもあちこちに及んでいる。特にゴムでできている部品はどこもかしこも酷いものだ。

 といっても、クルマというのは壊れるところは壊れやすいが、その分、壊れないところは壊れにくく作られてもいる。交換すべきパーツを交換すれば20万kmでも30万kmでも走れるように作られているのがクルマのすごいところだ。

 そして今回はステアリングラックまわりをリフレッシュする。ステアリングラックとは、ハンドルを操作したときに前輪を右や左に曲げるためのもの。ハンドルを操作すると、ステアリングラックが右に伸びたり左に伸びたりして、前輪を左右に押すことで、タイヤの向きを変えることができる。そして、伸びたり縮んだりする部分にはブーツが付いているのだが、そのブーツがパッカリと真っ二つに割れてしまっていて、このままでは車検に通らないのだ。

 つまり破れたブーツを抜いて新しいブーツに変えるだけの作業なのだが、そのためにはステアリングラックの先端にある、タイロッドエンドを外す必要がある。いや、正確に言うと外さなくてもできるが、このタイロッドエンドのボールジョイント部分のゴムブーツもすでに28年もの。今にも破れんばかりなので、一緒に交換してしまいたいのだ。

 クルマの前輪は、右に左にとタイヤの向きを変えるだけでなく、走行中は上下に動いて段差をいなす。そんな複雑な動きをするために、ステアリングラックの先端には、タイロッドエンドと呼ばれるボールジョイントを持ったパーツが固定される。ボールジョイント部分にはグリスが封入されていて、そのグリスが漏れないように覆っているのがタイロッドエンドブーツになる。ここが破けると中のグリスが漏れてくるし、グリスが流れ出ればボールジョイントが摩耗する。さらにここが破けていても車検は通らないのだ。

 加えて、ロードスターのフロントサスペンションはダブルウィッシュボーンというタイプなので、タイロッドエンドの他に、アッパーアームとロアアームにもボールジョイントがあり、それぞれにブーツが付いている。これらも新車から28年ものなので、この際すべて交換してしまおうと思っている。

■ 心臓が弱い人には危険!! ハラハラドキドキのタイロッドエンド外し

 ということで作業を進めたいのだが、このタイロッドエンドやアームのボールジョイントを外す作業がちょっとやっかい。というかはっきり言ってあまりやりたくない作業なのだ。

 というのも、タイロッドエンドやボールジョイントの先端は、テーパー状(円すい状、根元の方が太い形状)になっていて、タイヤの根元のナックルという部品に、ガッチリとはまりこむようにできている。これはステアリングまわりにわずかでもガタが出ないための工夫なのだが、それ故にボルトを緩めても外れてくれないのだ。なので、このガッチリとはまり込んだボルトを力技で外す必要がある。

 方法はいくつかあるが、一般的なのはタイロッドエンドプーラーと呼ばれる特殊な工具を使う方法。これは洗濯ばさみのような形状の工具で、先端のひとつは、薄くで先が割れた形状、例えるなら真ん中の割れた平たがねといったイメージ。もうひとつの先端はボルトの頭を押さえられるような四角い断面の形状、手元側にはネジが付いていて、ネジを締めると手元側が開き、口先が閉じる構造になっている。

 この先端の薄いたがねの様な方をナックルとタイロッドエンドとのすき間にたたき込み、もうひとつの先端をタイロッドエンドのボルトの先端に当たるようにセッティング。そうしたら、手元のボルトのねじ込めば、口先が閉じていって、タイロッドエンドが外れるという仕組みだ。

 ただし、文字で説明するのと実際にやるのとはまったく別で、実際にはなかなか外れず、ネジの締め込みにもかなりのチカラを入れる必要がある上に、いつ外れるのかまったく予想がつかない。そして外れるときは「バコンッ!!!」とものすごく大きな音と衝撃が走る。

 つまりは端的に言ってとても心臓に悪い作業なのだ。それを左右3箇所、計6回やらなければならない。ノミの心臓の筆者にとっては、できれば避けて通りたい作業なのだ。

 ただし、今回はネットでいろいろと予習して、少しは安全にというか、心臓に優しく作業することができた。

 というのも、前のクルマで作業したときは、タイロッドエンドプーラーは、ネジを締め込むチカラ(口先が開くチカラ)で外すものだと思っていたので、いつ「バコンッ!!!」と行くのか、ドキドキしながらボルトを締め込んでいたのだ。しかし実は締め込むのは補助で、たがねのようにガンガンたたいて外すのが正しい使い方らしい。以前やった数十年前は、今ほどネットの情報も多くなかったので、使い方を理解していなかった。

 そこで用意したのが、石頭(せっとう)ハンマーと呼ばれる巨大なハンマー。これを使ってガツンガツンとたたき込む。たたき込んだらボルトを締め込んで行って、再びガンガンたたく、というのを繰り返す。

 このやり方が正解で、ハンマーをたたいた瞬間に「バコンッ!!!」と行くので、いつ「バコンッ!!!」と行くかドキドキしながらボルトを締め込むのに比べて心の準備ができる。外れるときの音の大きさも心臓に悪い一因だったが、叩くときには音が鳴る覚悟で叩いているので、外れたときに大きい音がしても、心臓のバクバク度は段違いに抑えられるのだ!

 いや、「のだ!」とか言われてもやったことがない人にはぜんぜん伝わらないだろうが、以前やったときの作業がトラウマになるぐらいほんとにドキドキの作業で“心臓の弱い人はお控えください”というレベルなので、これはめちゃくちゃ画期的なのだ。

■ 元通りに戻せないと真っ直ぐ走らなくなるタイロッドエンド

 ということで、変なところで興奮してしまったが、タイロッドエンドのリンク部分を無事に外すことができたので、次はステアリングラックにねじ込まれているタイロッドエンドを外す。

 ただしそのまま外してしまうのはNGで、あとで元通りの位置にきっちりと戻せるように先にホワイトマーカーでマーキングをしておくのが必須。この位置はアライメントに直結する部分で、もしも位置がずれると真っ直ぐ走らないクルマになってしまう。

 続いてクローフットレンチなどを使ってタイロッドエンドとダブルナットになっているナットを緩める。ちなみにステアリングラックのシャフト自体もグルグルと回ってしまうものなので、上なり下なりにマーキングをしておいて、もし回転してしまっても分かるようにしておく。

 ダブルナットを緩め、タイロッドエンドを外す準備ができたら、これまたネットで知ったワザなのだが、外すときに何回転したのかを数えながら外すといいらしい。今時スマホで動画もすぐに撮れるので、外す様子をメモ代わりに動画で撮りつつ、イ~チ、ニ~、サーン、と数えて、何回転と何分の何回転で外れたのかを記録しておく。こうしておけば、戻すときも同じ回数だけ回転させることで、きっちり元通りの位置に戻すことができるわけだ。

 DIY歴はそれなりに長いが、タイロッドエンドを外すことなんてそうそうないので、こういったテクニックは本当に参考になる。というかYouTubeでいろいろと情報公開してくれている皆さまに感謝感謝である。

■ ブーツを外したら中のグリスがカピカピに!

 これでステアリングブーツを外せる状態になった。ステアリングラックブーツは外側がクリップ、内側が針金で固定されている。ブーツ自体は左右とも見事にぱっくりと割れていた。

 ブーツを外してみると中のボールジョイント部のグリスがカピカピになっている。なので、ウエスで古いグリスを拭き取って新しいグリスを塗り込む。また、ラックギアの部分にも薄くグリスを塗布しておいた。

 そして新しいブーツを装着。NAロードスターの場合、なぜか左右でブーツの品番が異なるのだが、目視で見る限り、左右でブーツの違いは見つけられなかった。目に見えて違うのはブーツを固定するための針金の材質。ただブーツを固定するためだけの針金なので、なぜわざわざ左右で種類を変えているのかはまったく不明だ。

 ということで左右ともステアリングラックブーツが新品になった。ステアリングラックブーツ交換だけなら、このまま元に戻せばおしまいだが、今回はタイロッドエンドブーツと上下のボールジョイントのブーツも交換するので、それは次回お届けしたい。

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