《巨大企業グループの内実》阪急と阪神“カラーの違う2社”の狭間で揺れるタイガースの価値 「いずれホテル事業、旅行事業と同じ道をたどる」の指摘

AI要約

阪急阪神HDの経営体制が揺らぎ、角和夫氏が批判される中、影響が阪神タイガースの監督人事にも及んでいる。過去の経営カラーの違いや文化の違いを考慮すると、両社の融合は困難であり、今後の展開が注目される。

阪急は高級志向であるのに対し、阪神は庶民派であり、それぞれの企業カラーは明確だ。阪神の球団運営が阪急の影響下にありつつある中、両社の対立要素が浮き彫りになっている。

岡田監督の人事や宝塚歌劇団の問題により、阪神タイガースの価値が高まっていると見られる。阪急阪神HDの経営方針や戦略の変化が、球団の今後に影響を与える可能性がある。

《巨大企業グループの内実》阪急と阪神“カラーの違う2社”の狭間で揺れるタイガースの価値 「いずれホテル事業、旅行事業と同じ道をたどる」の指摘

 関西屈指の巨大企業グループが揺れている。今年6月に開催された阪急阪神HDの株主総会では、傘下の宝塚歌劇団で起きた「パワハラによる俳優の自死事件」で代表取締役会長兼CEOの角和夫氏(75)が批判に晒された。阪急阪神HDで長く続いてきた角体制の揺らぎは、傘下にある阪神タイガースの監督人事を含め、様々な影響が出るのではないかとみられている。阪神番記者が語る。

「2006年の合併後も、阪急側は阪神球団の監督人事などに口を出さないかたちが続いていました。しかし、2022年オフの岡田彰布監督の誕生は、阪急出身の角会長のトップダウンで決まったとされています。阪急側が球団運営の主導権を握ることになると見られていたが、角体制が揺らぐとなると、どうなるかわからない。阪神と阪急では据えたい監督像が180度違うといわれていますからね」

 阪急阪神HDは2006年に阪急と阪神という関西私鉄大手同士の合併で誕生した。関西在住のジャーナリストが言う。

「もともと阪急と阪神では経営方針、経営理念がまったく違います。阪急は長年かけて高級派を演出してきましたが、阪神は庶民派を売りにしてきた。それ以外にも、厳しい管理主義を敷いてきた阪急に対し、阪神はよくいえば放任主義、悪く言えばどんぶり勘定。相容れない企業カラーだった。

 阪急のほうが圧倒的に規模が大きく、シビアな社風でもあります。数年前までは、“タイガースは阪急阪神HDの管轄外”という考え方だったのに、阪急側が徐々に影響力を増すようになってきた。阪神サイドからすれば『阪急は過去に球団(ブレーブス)経営を失敗しているじゃないか』という思いがあった一方、阪急サイドからすると、阪神側の管理が甘いと映るところもあるのでしょう。選手の管理能力が甘く、スキャンダルが表沙汰になるというのは、阪急のカラーからすれば社員教育や管理ができていないという話になってくる」

 大阪・梅田駅前に建つ阪神百貨店と阪急百貨店を比較してもカラーの違いがよくわかる。阪神百貨店の目玉は、地下の惣菜売り場。名物のイカ焼きをはじめ、寿司まで立ち食いだ。上層階では球団直営のショップで阪神タイガーズグッズを販売している。

 一方の阪急百貨店は老舗の食材店がテナントで入り、上層階では高級ブランド品を押し出している。ブランド品や宝飾品に強い阪急と食料品に強い阪神。集客力や客層にも違いがあり、関西人にとっても“阪急は高級”“阪神は日本一のデパ地下”と棲み分けができている。

「ただ、阪急が持っている宝塚歌劇団と阪神が西梅田に作った劇団四季の常設小屋をうまく連動させてお互いのファンを取り込むといったこともやっている。今後は、阪急が一度は手放した野球部門がどのような位置づけになるかがポイントとなっていたところに、阪急サイドが岡田監督を送り込むという人事があり、さらに宝塚歌劇で問題が起こった。阪急阪神HDにとっての阪神タイガースの価値が増したとも言えるのではないか」(前出・関西在住の経済ジャーナリスト)