ライバル店の支援も成長戦略に入れた家具店 3代目が磨くプロデュース力

AI要約

創業82年の家具インテリア販売会社リビングハウスは、3代目社長の北村甲介さんが13年で売上高を3.6倍に拡大させ、2025年の株式上場も目指す成長企業である。

成長の要因は、商品力、店舗力、社員教育にある。特に社員教育には並々ならぬ力が注がれ、新入社員から先輩社員まで幅広く徹底的に研修が行われている。

北村さんは積極的に社員を海外の展示会に同行させ、目利き力とマーケット感覚を育む取り組みも行っている。

ライバル店の支援も成長戦略に入れた家具店 3代目が磨くプロデュース力

 創業82年の家具インテリア販売会社リビングハウス(大阪市西区)3代目社長の北村甲介さん(47)は、社長就任から13年で売上高を3.6倍の53億円まで拡大させ、2025年の株式上場も見据えています。その成長を支えてきたのは、ドイツやイタリアの高級家具の独占販売などの商品力、潜在顧客を掘り起こす店舗力、そして徹底した社員教育による商品提案力の3本柱です。後編では、北村さんが注力した独自の社員教育と、ビジュアルや市場を重視した店舗戦略、地方の百貨店や家具店の支援で広げるtoB向けビジネスなどの成長戦略に迫ります。

 1942年に創業したリビングハウスは、ドイツやイタリアなどから中高価格帯の家具を集め、ニトリやIKEAといった大手家具店がひしめく郊外ではなく、駅前などの商業施設を中心に店を構えています。スリッパを前面に売り出したり、店内に英会話教室を誘致したりするなどのユニークな戦略で、家具の「衝動買い」の需要を掘り起こしました(前編参照)。

 北村さんが2011年に社長就任してから、リビングハウスの店舗数は8から37に拡大し、社員数も約60人から約220人に増加しました(2024年6月現在)。このうち正社員は9割を占め、中でも成長を支える家具・インテリアの販売を担う店舗スタッフは98%が正社員です。正社員スタッフの接客・販売力の育成に、リビングハウスは注力しています。

 「洋服ならお客さんが試着して気に入れば買ってもらえますが、単価が高い家具はそうはいきません。お客さんはインテリアの知識や経験が豊富ではないので、自然と買い物に慎重になる。接客には豊富な知識と経験、商品提案力が必要なんです」

 商品提案力とは、商品の基礎知識に加え、顧客の部屋の空間を把握する力、おすすめの商品を部屋や既存の家具とコーディネートする力、そしてそれらをプレゼンテーションする力です。当然、一朝一夕で身に付くものではありません。

 リビングハウスの新入社員は、新卒も中途も入社後1年間は2カ月に1回本社に行き、接客やコーディネート、プレゼンテーションなどの研修をみっちり受けます。

 例えば接客の研修の場合、入店した人に声をかけることを「1の型」、そのニーズを聞き出すことを「2の型」といった具合に分解。1の型と2の型を習熟すれば、店頭に出て実際に接客を試みます。

 さらに顧客が商品を気に入って購入まであと一歩という段階になれば、先輩社員が登場。一緒に接客してもらうことで、新入社員は先輩が示す商品提案力を現場で学べるのです。

 研修は教育専門の部署が担当しますが、北村さん自身も毎回講義を受け持っています。

 商品の仕入れで海外の展示会に赴く際、北村さんは積極的に社員を同行させています。仕入れ値を見ながら「リビングハウスでならいくらで売るか」を考えてもらうことで、目利き力とマーケット感覚を養ってもらうのです。

 「家具・インテリアの業界で、うちは間違いなく教育に時間、お金、労力を最もかけていますし、それが社員の商品提案力を支えています」