ヴィンテージ腕時計を学ぶ──「今、時代はドレッシーロレックス」

AI要約

ヴィンテージ腕時計のブームを巡るEWC SHOTOの取材。意外なヴィンテージロレックス市場の動向を探る。

若い世代を中心に注目を集めるヴィンテージウォッチ店「EWC SHOTO」の魅力に迫る。

江口大介さんのセレクトに見る、チェリーニやオイスター パーペチュアルなどの魅力的なヴィンテージロレックスモデル。

ヴィンテージ腕時計を学ぶ──「今、時代はドレッシーロレックス」

本格化するヴィンテージ腕時計のブーム。この企画では旧き良き時計界のヒト・コト・モノを探訪。今回は「EWC SHOTO」を訪ね、意外な変化を見せ始めたヴィンテージロレックス市場の動向を探る。

今年2月にグランドオープンを果たした東京・渋谷の「EWC SHOTO」。若い世代を中心にヴィンテージウォッチのご意見番として知られた「江口洋品店・江口時計店」の新店舗だ。オーナーの江口大介さんは、確かな審美眼と共に、ツイストを効かせたセレクトが身上だ。おすすめのヴィンテージロレックスを尋ねると、ちょっと意外なモデルが浮上した。

江口さんがまずトレイに並べたのは2本のチェリーニ。アシンメトリーなケースが特徴的な「Ref.4017-9」(1974年製)と、8角形のベゼルを持つブレスレットウォッチの「Ref.4350/8」(1981年製)だ。特にRef.4017シリーズは「キングマイダス」とネーミングされ、故ジェラルド・ジェンタがデザインを手掛けた唯一のロレックスとしても知られている。

1950年代から単独のコレクションとしてスタートを切ったが、70年代にはチェリーニ・コレクションの中に統合され、間もなく廃盤となった。Ref.4350は最初からチェリーニとしてデザインされたモデルだが、中には「マイダス」の名を刻んだダイヤルもあり、キングマイダスの系譜に連なる1本、または後継機とされることもあるようだ。

「サブマリーナーやGMTマスターといった、ギアウォッチのカッコ良さは分かるんですけど、決してスーツには似合わない。またチェリーニは、スポーツモデルとは違う次元で、ディテールの細かさを持っているんです。継ぎ目の目立たないブレスレットとか、キングマイダスのケースが持つ、レザーストラップにスッと繋がっていく雰囲気とか、腕にしたときにだけわかる心地よさがありますね」

「もしチェリーニでは尖りすぎていると感じるなら……」と、江口さんが取り出したのは2本の「オイスター パーペチュアル」系。ロレックスの中ではスタンダードな位置付けのモデルであり、それゆえに人とは違うチョイスが中々に難しい。

特に「Ref.1500」のリファレンスを持つ「オイスター パーペチュアル デイト」は最もベーシックな1本だが、江口さんが選んだ1961年モデルは、楔形のインデックスにビッグロゴという、特徴的なダイヤルを持っている。

さらに年代を遡る1951年製の「オイスター パーペチュアル」(Ref.6065)は、いわゆる「バブルバック」の中でも珍しいフーデッドラグを持っている。組み合わされるブレスレットも、純正のクロムウェル社製がまだ生きている。

「あまりヴィンテージに馴染みのない一般の方には、基本的に1970年代の製品をおすすめするようにしています。もちろんロイヤル オークが最初なのですが、他にもジェンタのデザインしたオメガのCラインケースとか、時計をデザインすることに初めて注目が集まった時代だと思うんです。そうした中にはシンプルな美しさを持った時計もたくさんあります」