話題の中国発ショートドラマ、億単位で視聴されても儲からない実態。本当は「黄金の卵」か

AI要約

中国デジタルコンテンツ大手のCOL Groupが出資するCrazy Maple Studioが運営するショートドラマアプリ「Reelshort」が米国で爆発的な人気を獲得している。

Reelshortは広告収入を除く売上高が約10億元で、米国市場が主要収益源となっている。

しかし、Crazy Maple Studioは依然としてわずかな利益しか上げておらず、Reelshortに大きな費用を投入していることが明らかになっている。

話題の中国発ショートドラマ、億単位で視聴されても儲からない実態。本当は「黄金の卵」か

ショートドラマアプリ「Reelshort」を運営する米「Crazy Maple Studio」が世界から注目を集めている。同社は中国デジタルコンテンツ大手の中文在線集団(COL Group)が49.16%を出資する子会社で、ゲームスタジオとして事業をスタートしたが、2023年にReelshortをリリースすると、海外で爆発的な人気を呼んで一気に知名度を上げた。

Reelshortは現在も、米国の人気アプリランキングでトップ50圏内にとどまり続けている。調査会社SensorTowerによると、2024年4月までの売上高(広告収入は除く)は約10億元(約220億円)で、うち米国売上高が7割近くを占める。

意外なことに、Crazy Maple Studioは依然としてギリギリ黒字の状態だ。中文在線の2023年の決算報告書によると、Crazy Maple Studioは売上高が前年比87%増の6億8600万元(約150億円)となった一方で、純利益はわずか24万4200元(約540万円)にとどまった。中文在線は、ショートドラマの人気を背景に2年連続の赤字から黒字転換を果たしたとしているが、現在のところ主に貢献しているのは中国国内のショートドラマ事業だとみられる。

ReelShortの成長を振り返ると、まずは米国で自社制作ショートドラマ数本の人気に火がついたことがきっかけとなり、2023年6月には米国のiOSアプリの人気ランキングでトップ100入りを果たした。その後、TikTokへのショートドラマ投稿を自社アプリのユーザー数拡大につなげつつ、ドラマの自社制作にも力を入れ続けた。その結果、23年末には米国のApp StoreとGoogle Playの両方で、TikTokを抜いて人気アプリランキングの1位を獲得した。それ以降もトップ50圏内を維持しており、競合するショートドラマアプリを大きく引き離している。

SensorTowerの調べによると、ReelShortの2023年の収入は4億元(約90億円)以上だったとみられる。ここでReelShortの収益モデルにも触れておくべきだろう。ユーザーは、最初の数話を無料で視聴できるが、続きを見るには広告動画を見るか料金を支払うかを選ぶ必要がある。1話ずつの購入も可能だが、サブスクリプション方式で好きなだけショート動画を見る方法もある。実際は、多くのユーザーは課金せずに広告を視聴して続きを見る方法を選択している。つまり、広告収入を加えれば、23年の売上高は90億円をはるかに超えていたはずだ。

その売上高急増に貢献したのが、複数の製品・事業の経営資源の配分を最適化した結果だともいえる。Crazy Maple Studioは、ReelShortに加え、2017年にリリースした物語性の強いナラティブゲーム「Chapters」、20年に打ち出したネット文学プラットフォーム「Kiss」を組み合わせて収益拡大を図っている。まずはKissで発表したオリジナル作品の人気を見極めて、ナラティブゲームに改編する。ゲームの収益力が高ければ、1話1分間のショートドラマに仕立て上げるという効率の良い流れだ。

にもかかわらず、純利益がわずか500万余りにとどまった原因は、ReelShortにかけたコストだったとみられる。

ReelShortは当初、ユーザー獲得のために巨額のマーケティング費用を支出した。中国メディア「揚帆出海」によると、1カ月あたりの広告費は約600万ドル(約9億7000万円)に上ったという。また、ショートドラマ1本にかける制作予算も、20万ドル(約3200万円)と同業他社の2倍に上る。中国国内で制作された人気作品に字幕をつけて海外向けに配信する方法もあるが、それぞれの地域や国の文化や言語に合わせて一から作った作品で、より多くの視聴者を獲得するのが狙いだ。

ReelShortはすでに、自社制作の作品約40本に加え、他社と共同制作した作品約90本を配信している。さらに、今後は自社制作作品を1週間で2本以上更新する計画で、制作費は際限なく膨張していきそうだ。同社の運営チームは以前、投資先行期に多くの利益は期待しないとしており、23年の純利益の少なさも想定内だったのではないだろうか。