「インフレ税」はやっぱり進んでいる。政府債務の圧縮に勢いが……

AI要約

日銀の資金循環統計により、家計と政府部門の変化が明らかになった。

政府の債務残高が名目GDP比で低下し、14年ぶりに純債務の名目GDP比が100%割れた。

政府の資産内訳からは、株高や為替差益の影響が読み取れる。

「インフレ税」はやっぱり進んでいる。政府債務の圧縮に勢いが……

前回寄稿では、6月末に日銀が公表した資金循環統計(2024年3月末時点)で、家計の金融資産に占める外貨性資産(外貨預金や外貨建て投資信託など)が過去最高を更新したことに注目し、それが日本経済の今後にもたらす影響まで考察した。

実は筆者としては、この資金循環統計に関して、家計部門における変化以外にもう一つ注目すべき変化を併せて指摘しておきたかった。それは政府部門における変化だ。

5月中旬の寄稿「これは『インフレ税』の始まりなのか。実は減り出した日本の政府債務」に対しては非常に大きな反響があり、インフレにより政府債務残高が圧縮され自ずと財政再建が進んでいく目下の構図に関して、さまざまなご意見ご感想をいただいていた。

今回の資金循環統計から読み取れる政府部門の変化は、まさに上の(5月中旬の)寄稿における指摘を追認するものだった。

以下では、統計で示された数字を具体的に見てみよう。

一般政府債務の名目GDP(国内総生産)比は総債務で241.3%と、前期の241.5%から低下。純債務(総債務から通貨や預金、負債証券などの金融資産を差し引いたもの)も94.7%と、前期の102.8%から低下した。

純債務の名目GDP比100%割れは、2010年第2四半期(4~6月)以来14年ぶりのことだ【図表1】。

一般政府の総資産の内訳に目を向けると、対外証券投資は前期比22.7兆円増、株式等・投資信託受益証券が同11.9兆円増、現預金が同3.3兆円増となっている。

対外証券投資、株式等・投資信託受益証券ともに、世界的な株高を受けて資産価格そのものが上昇し、そこに円安による為替差益が乗った結果と説明できるだろう。

現預金の増加については、その内訳として流動性預金や外貨預金が特に増えていることから説明できる。

流動性預金(預入期間の定められていない普通預金や当座預金など)の増加からは、インフレが定着する中で家計から企業へ、企業から政府へと所得の移転が進む様子が透ける。一方、外貨預金の増加が円安の影響であることは言うまでもない。