スマホもEVもすぐ話題に、シャオミが強い本当の理由――中国ビジネスに欠かせない「流量」の考え方とは

AI要約

シャオミの雷軍CEOが中国のモーターショーに登場し、注目を集める。

中国のテック企業は流量を活用し、市場での存在感を高めている。

一方、中国の新興ブランドは研究開発不足で大手海外ブランドとの差がある。

スマホもEVもすぐ話題に、シャオミが強い本当の理由――中国ビジネスに欠かせない「流量」の考え方とは

中国で知っているテック系企業の経営者の名前を思い浮かべるなら、スマートフォン大手のシャオミ(小米)の雷軍CEOは最初に出てくるかもしれない。ひと昔であれば、アリババのジャックマー(馬雲)氏が有名だった。他にもよく話題になる経営者は、バイドゥの李彦宏氏、テンセントの馬化騰氏、GREEの董明珠氏などが挙げられるだろう。

これまで、モーターショーといえば車だけでなくコンパニオンが来場客の視線を集めていたが、今年大きく変わった。4月25日に開幕した2024年北京国際モーターショーでは、シャオミの雷軍氏自らが会場にやってきた。代表であり企業の広告塔となる雷氏の周りには人だかりができ、それだけで話題となりひいてはシャオミの新車への関心を持たせたのだ。雷氏の知名度は圧倒的で、多くの自動車会社を恐れさせている。理想汽車(Li Auto)のような有力EVメーカーですらもシャオミが自動車を製造した後、オンラインでの存在感は急激に低下した。会場に雷氏がやってきたことで、他の自動車メーカーも焼け石に水とは承知の上で、続々とトップ陣が会場に入り客寄せに励んだ。

シャオミは強い。中国で登場した無数のスマートフォンメーカーが激戦を繰り広げる戦国時代を生き抜いて、中国を代表するにまで成長した1社となっている。その強さは、製品クオリティやコスパはもちろんのこと、加えてネットユーザーを引き付けるマーケティング戦略もある。当初は、スマートフォンの予約販売台数を小出しにして、そのたびにニュースが出て注目を集め、その手法は「小米方式」と言われた。シャオミのファンを意味する「米粉(Mi Fan)」という言葉もあるが、実は特定ブランドのファンであり続ける人の割合は中国は日本に比べてすごく少ない。なので有名ブランドのシャオミでさえ、ファンを抱え込み続けるために情報を出し続け、消費者にシャオミの情報に関心が行くようにした。

シャオミしかり、中国におけるどれだけファンを抱え込んだかというときに使う単語が、中国進出や中国マーケティングでよく使われる「流量(トラフィック)」だ。シャオミの場合は雷氏自身がIPとなり流量を増やしている。シャオミに限らず、急に話題となり、天猫や京東をはじめとしたECサイトで爆売れするブランドが出てくるのも、流量で露出した影響によるものだ。KOLと呼ばれるインフルエンサーが話題を出し、フォロワーを増やしたりした流量が多い状態で自社のライブコマースや旗艦店に消費者を誘導することで、販売実績に連動する。淡々とモノづくりをするだけで、流量を活用しない中国企業は宝の持ち腐れで間違っているとまで酷評する記事もある。何もしなくてもいい製品であれば評価してくれる日本とは真反対だ。

例えば、日本でも販売されているLaifenという中国で人気なドライヤーブランドがある。ダイソンに似た製品で、低価格を武器に価格に敏感な消費者を獲得し売上を拡大した。しかし売上で勝っても総合的にダイソンを上回るわけではなく、世界的にはダイソンのほうが人気だ。それは魅力的な新製品をリーダー企業として世界で出し続けているからであり、そのために研究開発に惜しみない投資を行い、技術を蓄積しているためだ。中国新興ブランドの多くは売れてはいるが研究開発不足で、価値創造や品質管理においても大手海外ブランドとの間には依然として差がある。