〝モグラたたき〟の為替介入 日米金利差開いたまま 投機筋「まだまだもうける」

AI要約

政府・日銀が円買いドル売りの為替介入を再開した。これは政府・日銀にとって負け戦であり、苦渋の決断だった。

政府・日銀は米消費者物価指数の影響を受け、円買いドル売りの戦略を練り、適切なタイミングで介入した。

投機筋は日銀やFRBの金融政策の変化をあまり気にせず、引き続き円売りを続けている。

政府・日銀が11日夜、再び円買いドル売りの為替介入に踏み切ったとの観測が浮上している。前回は1ドル=160円台をつけた4月下旬から5月上旬にかけて、9・7兆円規模の介入を実施したが、それから約2カ月後の今月3日には一時、162円台まで円安が進んだ。日米の金利差が開いたままという構図に変わりはなく、政府・日銀にとっては負け戦と分かった上での苦渋の決断といえる。

■戦略練る政府・日銀

「適切なタイミングでの介入だ」。一夜明けた12日、東京市場では政府・日銀の決断を評価する声が聞かれた。

引き金となったのは、米消費者物価指数の発表だ。インフレが鈍化し、連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げに転じるとの見方が強まった。これ以上の金利上昇が見込めないドルを売って、円を買い戻す動きが優勢となった流れに、政府・日銀も乗った。

5月2日にも、似たような動きがあった。FRBのパウエル議長が会見で、追加の利上げに踏み切る可能性について「低い」と明言し、円高に振れたタイミングで介入したとされる。

政府・日銀は戦略的に動いているものの、投機筋には響いていない。

「高いところで円を売れる。まだまだもうけるつもりだ」。エコノミストの豊島逸夫氏が12日、情報交換した米ニューヨークを拠点とする国際通貨投機筋はこう語ったという。

■意気揚々の投機筋

投機筋が自信を持つのは、日銀もFRBも「短期的には金融政策を大きく変えることはない」との読みがあるためだ。景気への影響を考えれば、日銀は追加利上げなど金融政策の正常化を慎重に進めるしかない。経済が堅調な米国でも、FRBは利下げを慎重に見極める必要がある。

度重なる為替介入で相場が円高方向に振れるたびに、投機筋にとっては、また勝負の余地が広がるという悪循環も生まれつつある。

問題は投機筋がどこにゴールを設定しているかだ。豊島氏は「今は1ドル=164~165円程度をみているようだ」と解説する。

米国のインフレに関する指標はしばらくは強弱まちまちの内容が出てくる可能性が高い。「投機筋を一回たたいたところで、風向きが変わればまた出てくる。為替介入はモグラたたきのようなものだ」。豊島氏はそんな見立てを示す。(米沢文)