暖気はたっぷりやってできるだけ低回転でそろーっと走る……はむしろエンジンを傷める! 本当に正しいクルマのエンジンのいたわり方とは

AI要約

クルマのエンジンの労り方について誤解されやすいポイントを解説。暖機運転やアイドリング、アフターアイドリングについて正しい方法を紹介。

適切な暖機運転はエンジンにとって利点がなく、逆にダメージを与える可能性がある。エンジンを労るには暖機運転よりも適切な運転が重要。

短時間の走行を繰り返すことによるエンジンオイルの乳化を防ぐためにも、適度な高回転でエンジンを回し続けることが大切。

暖気はたっぷりやってできるだけ低回転でそろーっと走る……はむしろエンジンを傷める! 本当に正しいクルマのエンジンのいたわり方とは

 クルマを労りたい。だからこそ、負担をかけないようにそろーっと走る。これは間違いではないが、でも正解ともいえない。たまにはエンジンをブンまわすのもエンジンにとってはいいことなのである。

 エンジンを傷めないようにしっかりと暖機運転して、走るときもできるだけ高回転までエンジンを回さないように走り、走行後はアフターアイドルをしてエンジンを労ってから止める。これは正しいようで大間違い。全部間違いである。

 まず、エンジンをかけてしばらく放っておく暖機運転。これは不要どころか、エンジンを傷める可能性が高い。エンジンをかけた直後にオイルが循環するまで10秒ほど発進まで待つのは理解できる。しかし、そこから先は逆効果。

 水温やエンジンオイル油温が上がるまでアイドリングで待つ暖機運転をする人もいるが、アイドリングでエンジン回転数が低いときはエンジンオイルの油圧も低い。そうなるとクランクシャフトなどフローティングメタルの油圧が浮き続けることができずに、クランクシャフトとメタルが接触。ダメージを与えてしまうことがあるのだ。

 そのため、エンジンをかけたら数十秒で発進するのが正しい。それから水温や油温が上がるまでは急加速をしないように丁寧に走ってあげればOK。むしろそのほうがエンジンに対する負担は少ない。

 走行中にエンジンを回さないのも逆効果。常に高回転をキープするように回すのもよくないが、ある程度はエンジンを回したほうが燃焼室は排気系のカーボンも飛ぶし、油圧がかかる。ときおりしっかりと回してあげたほうが調子がいい状態が保てるのだ。サーキット走行をすると、その帰り道はやはりエンジンの吹けは軽く、調子がよく感じるもの。

 高回転をキープではなく、高速道路の合流時はレッドゾーンの少し手前くらいまでアクセルをしっかりと踏み込んでエンジンを回してあげる。アクセルをしっかりと大きく踏んでエンジンを回すのだ。

 それから走行後はサーキット走行で全開から即ピットインでもしない限り、アフターアイドリングは不要。これも油圧の低い状態が続くことでエンジン内部にダメージを与えかねない。普通に街乗りや高速道路を走っていたなら、そのままエンジンを止めたほうがいい。

 自動車メーカーでも取扱説明書にシビアコンディションの条件が明記されていることが多い。これはエンジンに対する負担が大きいので、指定距離よりも短い距離でオイル交換をするべき条件のこと。坂道の走行が多いなどいくつか条件があるが、そのひとつに短時間の走行を繰り返すこと、というものがある。

 5分から10分以下くらいの短時間走行を繰り返すと、なかなかエンジンオイル油温が高くならない。油温はある程度高くならないとクランクケース内で結露によって生まれた水分がオイルに混ざり、蒸発しないためにオイルと水が混ざり、それが撹拌されて乳化してしまうことがある。コーヒー牛乳状になったオイルは潤滑性能が落ちる。そこで早めにオイル交換が必要なのだ。

 ときおりしっかりとエンジンをまわして走ってあげれば、エンジンオイルの油温も100℃近くなり、オイルに混ざろうとしていた水分は蒸発してくれる。そうすれば乳化は防げる。ある程度の距離をそれなりに走っている人のエンジンオイルでは毎回水分が蒸発されていくので、オイルが乳化せずに長い間よい状態で使うことができるのだ。

 そういった意味でも、ときどきエンジンをしっかりまわしてあげるのはクルマにとってはいいことなのである。