学生時代に“寝太郎”と呼ばれた柳井正氏は、いかにしてユニクロを築いたのか

AI要約

柳井正という日本を代表する経営者の半生と、ユニクロの成功の裏にある苦労の物語を描いた本『ユニクロ』について解説する。

柳井正は山口県宇部市出身で、厳しい父親から教育を受けながらも、東京の早稲田大学へ進学。学生時代は麻雀とラーメン屋で過ごし、就職活動に失敗してプータロー生活を送った。

父から会社を任された柳井正は追い込まれて本気になり、経営者としての覚醒を果たす。ユニクロの成功には何度もの挫折があり、その苦労が成功の基盤となっている。

学生時代に“寝太郎”と呼ばれた柳井正氏は、いかにしてユニクロを築いたのか

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こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『ユニクロ』(杉本貴司著、日本経済新聞出版)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

この本をどう表現したらよいか、いい言葉が浮かびません。一度、読み始めると止まらない作品であることは確かでしょう。経営者柳井正(敬称略)の半生、経営戦略論、一つの象徴的な会社をとりまく人たち、そのどの角度で切り取っても傑作の装いがあります。

タイトルとなっているのは『ユニクロ』で、その運営会社であるファーストリテイリングの物語となります。ですが、私には柳井正というその人のすごみと魅力の方に、強いメッセージ性を感じました。

ユニクロの華々しい成功ゆえに、どうしてもメディアで批判の的になってきました。しかしこの作品を読めば、その成功がどんな苦労の積み重ねの上に築かれてきたかを知ることになります。

そしてこの力作をこの短い記事で紹介するのは、ずいぶん無理があります。ここでは私が最も印象に残った柳井正という日本を代表する経営者とユニクロの飛躍への変曲点に焦点を当てて、触れていきたいと思います。

ファーストリテイリングが山口県に地盤があることを知っている人は多いかもしれません。もともと柳井正が育った地は山口県の宇部でした。炭鉱があり、宇部興産がその地域の産業の中心でした。

柳井正の父親である柳井等が創業した小郡(おごおり)商事は、当時紳士服を主に扱う商店街にある小売店でした。父からの教育や体罰は厳しく、正は父親から距離を置くようになり、逃げるように東京の早稲田大学に進学しました。

入学したのは1967年でした。学生運動が盛り上がりを見せていた時期になります。学生運動をくだらないと感じ、無気力に過ごしていた柳井正に大家のおばさんが付けたあだ名は「寝太郎」。下宿で仲間とする麻雀とラーメン屋を往復するような日々を過ごします。

そして、就職活動にも失敗し、大学卒業後には無職のプータロー生活を始めました。見かねた父の斡旋でジャスコ(現在のイオン)に入社するも9か月で嫌になり、またお気楽生活で無為に過ごしました。

父の等から呼び戻され、家業を継いでいくのですが、そこでも古株の社員に見放されました。そしていよいよ追い込まれて本気になり始めたころ、父親から会社のすべてと預金通帳を任され、柳井正の経営者としての覚醒が始まります。