対立を避けるなかれ 「仲良く喧嘩」するための4つのルール

AI要約

心理的安全性とは、チームが安心して意見をぶつけ合える状態であり、対立や葛藤から創造性が生まれる重要な要素である。

対立・葛藤を避けるのではなく、安心した状態で対立・葛藤に向き合い、仲間との信頼関係を深めることが重要。

チームでの対立・葛藤への対処法として、仲良く意見をぶつけ合う、反対意見に感謝する、正体を見極めて向き合う、そしてしっかりと相手の意見を聴くことが挙げられる。

対立を避けるなかれ 「仲良く喧嘩」するための4つのルール

 仕事の中で起こるさまざまな対立や葛藤は、誰しもできれば避けたいと思います。心理的安全性とは、対立や葛藤がないチーム状態だというイメージを持っている人もいるかもしれません。

 しかし、それは誤解です。心理的安全性が高い状態とは、メンバー同士が安心して反論を含め意見を言い合い、ぶつかることができる状態なのです。新しく創造的なものは、対立・葛藤の中から生まれてきます。対立・葛藤を避けるのではなく、チームをいかに安心して対立・葛藤できる状態にするかが重要なのです。

 葛藤と向き合うことはチームの創造性を高めるために重要です。しかし、葛藤が生じる場からいつも必ず創造的なものが生まれるとは限りません。葛藤や対立から生じる混沌(こんとん)があまりにも大きくなると、チームに亀裂が入り、信頼関係が崩壊してしまうこともあります。

 対立、葛藤にはこのような危険性があることもよく認識しておく必要があります。対立・葛藤の場の中で、チームを崩壊させることなく、創造的な活動を行うためには、やはりチームメンバー同士の相互理解と信頼関係が重要になります。安心して喧嘩ができるほどに「仲よく」なっておく必要があるのです(ここでいう仲よくは、もちろん波風を立てない馴れ合いの仲よしクラブという意味ではありません)。

 対立・葛藤は誰にとっても怖いものです。それは人間にとって当たり前の感情です。しかし、心理的安全性が高いチームをつくるためには、時にはその「当たり前」を越えていくことが必要です。対立・葛藤への恐れを越えることができたとき、仲間に対するより高い信頼感と、チームの創造的なエネルギーを手に入れることができます。具体的な手法を紹介していきます。

(1)「仲のよい喧嘩」をする

 対立に至らないのがよい会議だ、という思い込みを持っている人もいます。従って、会議が始まるときに、あえて意見をぶつけ合おうと確認することが効果的です。ぶつかるといっても、相手を攻撃するわけではなく、相手をリスペクトしたうえで、異なる意見や考え方をどんどん出し合うのです。

 具体的には「仲よくぶつかり合うことを大切にしよう」と、会議の冒頭にみんなでルールとして確認し合いましょう。筆者が所属するスコラ・コンサルトでは「仲のよい喧嘩をしよう」を合言葉にしています。

 端から見ると喧嘩をしているような雰囲気のミーティングもよくあります。しかし、それは目指す目的に向けて、信頼関係に基づいた、仲のよい喧嘩なのです。

(2)反対意見に感謝する

 ある会社では、反対意見が出なかった場合、意思決定を行わないことにしているそうです。反対意見があるのは当然で、全員賛成という状況は逆に健全ではないということです。とはいえ、反対意見を言うことは勇気がいります。従って、あえて反対意見を出してくれた人には、感謝を言うようにしましょう。「Aさん、反対の意見を言ってくれて、ありがとう。対極の意見が出たので、みんなで、この問題をより掘り下げて考えてみよう」と伝えましょう。

(3)葛藤とみんなで向き合う

 いざ対立・葛藤が起きたときには、みんなで一度立ち止まって、対立・葛藤の正体と向き合いましょう。対立・葛藤は、表面的にはAさんとBさんの対立というように、人の対立に見えます。しかし、本質的にはそれは2つのものの見方、考え方の対立なのです。じっくり立ち止まって、Aさんの意見とBさんの意見をよく吟味してみるとよいでしょう。

 そうすると、AさんとBさんの意見は深いところではつながっていたとか、2つの意見を統合させることでよりよいCという考え方が生まれた、という発展があるかもしれません。

(4)いつもよりたくさん聴き合う

 対立・葛藤の場では、ついつい自分と異なる意見を論破したくなります。そして論破することが必ずしも悪いことではないのですが、議論に勝つことだけに夢中になりすぎると、せっかくの対立・葛藤から多くを学ぶことができなくなります。普通は自分の意見にも相手の意見にも一理あるわけですから、こういう場では相手の意見を普段より一層しっかりと、より慎重に聴くことが大切なのです。

 ディベートになりそうな勢いを抑えて「まずは、Bさんの意見をしっかり聴こう」という風に、メンバーが傾聴のモードに入れるような働きかけをしましょう。

 このように、意見の対立や葛藤を成長につなげて、チームや会社をパワーアップしていきましょう。よい雰囲気をつくるためには、笑顔などの表情や「ありがとう」など感謝の言葉も重要です。基本的な「感じのよい」コミュニケーションを心がけましょう。