遅刻を注意されてまさかの「逆ギレ」…職場を腐らせる「何でも他人のせいにする人」の正体

AI要約

職場で起こる自己保身や他人を見下す態度について、具体的なエピソードを通して解説。

先輩からの注意を受けた社員が謝罪を要求する一方、反省の兆しが見られないケース。

他人を見下し、パワハラと主張する人たちの問題について考察。

遅刻を注意されてまさかの「逆ギレ」…職場を腐らせる「何でも他人のせいにする人」の正体

根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち6刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

製造業のある会社では、一つの業務完了後に書類に押印をして提出し、次の業務に移行することになっている。ところが、20代の男性社員は、自分が押印していない段階で書類を提出した。以前にも同様のことが生じており、ミスにつながりかねないので、しっかり確認してほしいという声が部署内からあがった。そこで、その部署のみなで集まって対処方法を検討していたところ、押印せずに提出した例の男性が「先輩から怒鳴られて、すごいショックを受けた。そのせいでへこんでしまった。謝罪してほしい」と言い出した。

この男性が先輩の男性社員から注意されたのは事実らしい。押印せずに提出していたことに気づいた先輩が「お前、何やってんだ。ハンコを押してから出すことになっているだろ。この前も、お前ちゃんと確認せずに出してたよな。そんなことしているからミスが減らないんだ」と語気を荒げて注意したという。その裏には、例の男性はミスが多く、次の業務を担当する先輩がそれを指摘したり修正したりするのに多大な時間とエネルギーを費やさなければならないという事情があったようだ。

こうした事情があったのだとすれば、先輩が語気を荒げずにはいられなかった気持ちもわからなくはない。ハンコを押すことが本当に必要なのかについては、とくにコロナ禍を機にしばしば議論の対象になり、デジタル化の妨げになっているという声もあがった。そのため、書類によっては押印の習慣を廃止した会社もあると聞く。しかし、この会社では少なくとも現時点においては押印する決まりになっているのだから、それを守るのが筋ではないかと私は思う。

ところが、この男性は、ハンコの押し忘れについて先輩から語気強く注意されたことを怒鳴られたように感じて根に持ったのか、先輩に謝罪を要求した。自分が押印せずに提出した件について悪かったとは微塵も思っていないことがうかがえる。それだけでなく、日頃からミスが多いことについても反省するどころか自覚さえしておらず、悪いのは注意した先輩のほうというスタンスのようにも見える。

似たような思考回路の人にはどこでも遭遇する。たとえば、私がメンタルヘルスの相談に乗っている保険会社に、遅刻を繰り返す20代の女性社員がいた。その分をカバーしなければならない他の社員から苦情がきていたので、40代の上司がやんわりと注意した。しかし、改善の兆しが一向に見られない。他の社員の手前もあり、上司が今度は強めに叱責した。すると、この女性は「パワハラです!」と逆ギレし、上司は人事に呼び出されて、事情を説明する羽目になった。

それと並行して、人事が周囲の社員にも事情を聞いたところ、この女性が遅刻を繰り返していたことが判明した。また、他の社員もそれについて日頃から不満を抱いていたし、上司の叱責の仕方は妥当で、とくに問題になるようなものではないという印象を抱いた社員が多いことも明らかになった。そのため、必ずしもパワハラとはいえないという結論が出た。

もっとも、この女性には悪びれた様子がまったくなかった。それ以降も、以前よりは頻度が減ったとはいえ、彼女は相変わらず遅刻を繰り返しているので、反省したわけでもなさそうだ。しかも、上司は、少しでもきつい言い方をするとパワハラで告発されかねないことを学習したのか、その後は彼女に対してあまり厳しく言わなくなった。だから、この女性はある意味では得をしたという見方もできる。

このように、自分の落ち度を注意されると、「パワハラ」と騒ぎ立て、「自分は悪くない。むしろ被害者だ」と主張する人は少なくない。ある金融機関でも、30代の男性社員が「ミスが多い。もっと注意深く書類を作成しろ」と上司から叱責されて書類をいちいちチェックされるようになり、それに不満を募らせたのか、「監視されている。パワハラだ」と訴え、大騒動になった。

もっとも、この男性のミスでは、同じ部署の同僚の多くが迷惑していたので、上司の叱責もチェックも当然だという声が圧倒的に多かった。何しろ、彼は融資希望の顧客が申込書に記入した内容をパソコンに入力する作業を担当していたのだが、生年月日さえ間違えることがしばしばあったのだから。

それでも、この男性に悪びれた様子はまったくなかった。しかも、上司のほうもパワハラだと騒がれたことで警戒するようになったのか、この男性が作成した書類をいちいちチェックすることも、厳しく注意することもなくなった。だからといって、彼のミスが減ったわけではなく、次の業務の担当者がミスを発見するたびに修正している。その分、確認のための時間がかかるし、修正のための作業も増えるので、一番の被害者はこの担当者かもしれない。

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。