広がる退職代行、企業の1割経験 「非弁行為」する違法業者も 利用者が共犯になる可能性

AI要約

東京商工リサーチの調査で、近畿2府4県で利用される「退職代行」業者の割合が10・4%となり、手軽さが受けているが法的トラブルに巻き込まれる可能性もある。

代行業者からの電話で社員の突然の退職意思が伝えられ、企業にとって意外な事態となった事例がある。

「Z世代」の特徴として、若い人たちが直接のコミュニケーションを好まない傾向があり、退職代行の利用が増える可能性があるとしている。

広がる退職代行、企業の1割経験 「非弁行為」する違法業者も 利用者が共犯になる可能性

■寝耳に水、GW明けに来た電話

近畿2府4県で「退職代行」業者を利用し従業員が退職したことのある企業が10・4%に上ることが、東京商工リサーチの6月の調査で分かった。同時におこなわれた全国調査でも9・3%だった。言いづらいことを口にしなくてすむ上、数万円程度の料金ですむ手軽さが受けているとみられる。ただ、利用のしかたでは法律上のトラブルに巻き込まれる可能性もあり、専門家は注意を呼びかけている。

「〇日付で会社を辞めさせてもらいます。必要な書類を送ってください」

大阪府にある製造関連の中小企業に、退職代行業者からの電話で社員の退職意思が伝えられたのは、ゴールデンウイーク明けの5月初めのことだった。社員は4月に入社したばかり。退職理由の説明はなかった。企業は寝耳に水だったという。

社長はみずから代行業者に電話し、慰留しようとしたが業者は取り合わない。社員には直接連絡しなかった。結局、この社員は退職した。

今年の新入社員は全部で数人程度。人手不足もあり、1人に辞められると痛い。「今後の戦力と考えていたのに(社員育成が)振り出しに戻った」。社長はこう悔やんだ。

東京商工リサーチの調査は6月3~10日に行われ、関西の企業約730社の回答を分析した。このテーマでの調査は初めてだ。

代行業者を活用した退職があったかを尋ねたところ、大企業は15・5%、中小企業は9・8%があったと回答。小売、製造、建設など、幅広い業種に及んだ。

「若い人の利用が多いと聞いている。退職希望時はネガティブな事柄を自ら伝えなければならない。直接のコミュ二ケーションを好まないともいわれる『Z世代』(おおむね1995年半ば~2010年代序盤生まれ)の特徴をあらわしているのではないか」

東京商工リサーチ関西支社情報部の瀧川雄一郎氏はこう分析し、「利用は今後も増えるのでは。『円満退社』を重視する考え方は少なくなるかもしれない」とする。

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