80代の母死去、遺産総額4,100万円…「相続税ナシ」のはずが、納付期限直前〈税務署からのお尋ね〉が届いた驚きの理由

AI要約

相続税を支払う必要がないと思っていた女性が、母親の相続で相続税の申告通知を受け取りパニックになる。

父親の相続時には相続税が不要だったが、母親の相続では状況が変わり、税務署からの通知に驚く。

相続実務士に相談し、タイムリミットに迫られながら対応することになる。

80代の母死去、遺産総額4,100万円…「相続税ナシ」のはずが、納付期限直前〈税務署からのお尋ね〉が届いた驚きの理由

父親の相続時には不要だった相続税の納付。父のときより預貯金が大きく減った母親の相続なら、相続税の納付はなおさら不要…。そう考えて気楽に構えていたある女性のもとに、税務署から「お尋ね」の封書が届き、パニックに。納付期限が迫るなか、対応に追われますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

今回の相談者は、50代会社員の鈴木さんです。8ヵ月前に亡くなった母親の相続の件で困ったことが起きていると、筆者の事務所に駆け込んでこられました。

「税務署から、こんな書類が送られてきて…」

鈴木さんが握りしめていたのは、税務署からの「相続税の申告等についてのご案内」の封筒、いわゆる〈税務署からのお尋ね〉でした。

鈴木さんは長女で、3歳年下の弟がいます。また、独身の鈴木さんは会社員として働きながら、ずっと両親と同居し、日常のこまごまとした面倒を見てきました。弟は結婚を機に別世帯となり、いまは妻と子ども2人、隣県に家を購入して生活をしています。

「父が亡くなったのは12年前ですが、そのとき母はまだ70代になったばかりでした。そのため、父の財産は母の老後を見越し、すべて母が相続したのです」

鈴木さんの父親が亡くなった当時は、相続税の基礎控除の改正前でした。当時は「5,000万円+相続人1人につき1,000万円」が基礎控除額で、8,000万円の財産までは相続税はかかりませんでした。

「父の財産は自宅と預貯金のみです。当時は、たしか自宅が3,500万円ぐらい、預金は2,000万円ぐらいでした。そのため、税務署には申告も、納税も不要だったのです」

鈴木さん家族は、母親に財産を移すため、遺産分割協議書を作成。無事に、不動産や預金の名義替えの手続きをすませたのでした。

「母が亡くなったあとに預金を確認したところ、残高は400万円ぐらい。生命保険の死亡保険金も500万円程度でしたので、今回も相続税関連の手続き不要だと思い、放置していました」

ところが、母親が亡くなってから8ヵ月を過ぎたとき、税務署から「相続税の申告等についてのご案内」という封書が送られてきたのです。

父親のときと同様「なにもしなくていい」と思い込んでいた鈴木さんは驚き、慌てて相談先を探し、筆者のところに駆け込んできた…という経緯でした。