コロナ禍で赤字拡大、粉飾決算も…倒産した鉄スクラップ卸売りが犯した見誤り

AI要約

福岡地裁より破産手続き開始決定を受けた鉄スクラップ卸売り会社の経緯。

海外価格転嫁難しく赤字拡大、粉飾決算に手を染めた結果。

相場の見誤りや粉飾の重大さを再認識させられた事例。

コロナ禍で赤字拡大、粉飾決算も…倒産した鉄スクラップ卸売りが犯した見誤り

鉄スクラップ卸売りを手がけていた守田は2023年8月3日に福岡地裁より破産手続き開始決定を受けた。

同社は19年9月に福岡市東区で鉄スクラップ卸売りや輸出業を目的として設立した。前職で培われていた代表個人の海外人脈をフルに活用することで売り上げを確保。韓国や台湾の鉄鋼メーカーをはじめ、東南アジアにも販路を築き、第1期決算は実質5カ月の稼働ながら、売上高約46億円を計上する。

翌期も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けつつも、売上高は約134億円を確保するなど、順調なスタートを切ったかのように見えた。しかし、すぐに暗雲が立ち込める。

この当時はコロナ禍で建物の解体工事などがストップし、鉄くずの発生が激減し、相場の取引価格が大幅に上昇していたのだ。だが、海外への価格転嫁は難しく、赤字が拡大する状況になっていた。そこで、第2期の決算の途中から当社は粉飾決算に手を染めた。金融機関との取引継続条件として「黒字決算」が条件とされていたからだ。黒字と見せかけるため、損益計算書の在庫を過大計上し、利益を計上していた。その後、海外での相場は落ち着きを見せたが、国内相場は続伸し海外相場との価格はさらに乖離(かいり)をみせた。同社の赤字額はさらに拡大し、金融機関への支払いも次第にストップ。23年3月には仕入れ先に対する買掛金の支払いも滞納するようになり、事業の継続を断念した。

同社は相場の動向を見誤り“赤字はすぐに取り返せる”との考えがあったのではないだろうか。粉飾は1度手を付けるとやめることが難しくなる。ことの重大さに気付けず、気が付いた時には破綻に向かって加速度的に進んでいくことを再認識させられるケースとなった。(帝国データバンク情報統括部)